ーOOO-はじめての歌舞伎 - 女殺油地獄

 こないだひまつぶしに映画館に行ったら、「女殺油地獄」というのをやってたですよ。これは「シネマ歌舞伎」というやつで、歌舞伎の劇場公演を撮影したモノを映画館で上映するという試みなのですな。
 そもそも映画館で見たいモノがなかったし、あとワタシは歌舞伎を見たことないのでちょっと興味がわいてきて、見てきました。


 さて初めての歌舞伎見物。まず驚いたのはセットのショボさだねぇ。NHKのコメディ「お江戸でござる」みたいな番組と変わらないクオリティ。うーむ。ま、仕方ないか。
 全然予備知識なしで見たんですが、「女殺油地獄」って関西が舞台のお芝居らしいんですな。なので、台詞回しが関西弁で、なおかつ古語。なにがなんやら、意味わからんって。
 だめだ。な-んか猛烈に眠くなる。
 と、主役が独特な節回しで決めゼリフをうなるとともに、タタンタンタンと拍子木(じゃないかも)を叩く音が聞こえてくるので、目が覚める、と。アレはお客さんに「ここが良い場面ですよ!」っていうことを強調する効果がありますわなぁ。


 物語的には、主人公がドラ息子というのが、感情移入しにくい部分。
 んでもって「うわー、これからどうなっちゃうんだろう?」というところで、終わり。
 え? これからあの主人公はどうなるわけ?
 これが連続ドラマだったら、ここは第一話のエンディングっていうか、この先がズーッとズーッと続くわけじゃん? フツー、ここから先の部分を描くだろう?
 しかし思えばアレは、舞台の上でそれ以上芝居をつづけるのが不可能な状態になってるのだ。
 舞台装置の限界が、物語の限界を定義しているというか。
 映画でもそうで、撮影技術やSFXやCG技術の発達が、いままで実現不可能だった映像を可能にし、新しい物語が作られていますよね。
 近松門左衛門が当時の舞台の限界にチャレンジしたのが「女殺油地獄」、と。


 別な日に劇団新感線の「五右衛門ロック」という芝居を映画館で見たのですが、これはすごかったですね。
 舞台装置が自由自在にうごき、背景にはスクリーンがあって映像が流れ、しかもそれを使いこなしている。
 お芝居なんだけど、歌があるのでオペラ的でもあり、だけどロック。それからチャンバラ。サスペンスとロマンス。
 その迫力に「やっぱ見て良かったなぁ」と満足したワタクシです。


 あれからしばらくたったのですが。
 思い返すと「女殺油地獄」が妙にハラにズシーンと残っているのです。
 主人公はあれからどうなったのか、描かれなかったその後が気になるのです。
 思えば、物語の冒頭で、ヒロインと主人公の間に何があったのかの肝心な部分は描かれていません。二人は通じ合っていたのか、いなかったのか。
 女殺油地獄は、何カ所か肝心な部分を描いてない。
 だから、ついつい思い出してしまう。想像してしまう。
 コレに比べると「五右衛門ロック」は、とてもスッキリしたのですが、それで満足というキモチになってしまいます。


 「五右衛門ロック」は面白かったし、また感線の舞台を見たいなー
と思いましたし、みなさんにお勧めします。
 「女殺油地獄」はなんかモヤーッとするし、おすすめしかねます。
 だけど妙にハラに残る作品だったので、またそのうち歌舞伎を見に行こうかな、と思っているワタクシなのでした。