ーOOO-舟旅に出る

 なじみの本屋にひさしぶりに行ってみたら、改装していてすっかり棚の配置が変わっていた。
 昔はあちこち本屋巡りをしたもんだったけど、ここに来るのも久しぶりだからなぁ。すっかり変わっちゃったなぁ。どこに何があるか知りつくした本屋だったら、迷わず本を探すことが出来るのになぁ…。
 だが、こうして見知らぬ本棚をめぐり、どこに何の本があるのか、あちこちウロウロするのも楽しいものだ。
 ふと目に入ったのは「本の雑誌」。本棚の配置が変わったから、ひょっこり出くわしたのだ。パラパラめくると、面白そうな小説の紹介にあふれていてクラクラする。
 そういえば最近は雑誌ばかり読んでいて、小説を読んでないっけ。


 で、「本の雑誌」で紹介されていた三浦しをんの「舟を編む」を探してみた。ネットで検索するのとちがって、リアルな本屋さんはその場で欲しい本を手にとり、読んでみることが出来る。
 で、さっそく見つけたこの本の帯によれば、
【辞書】言葉という大海原を航海するための舟
だ、そうだ。なるほど、舟を編むは「舟=辞書」を編む編纂者や編集者さんの物語だなぁと見当が付く。なるほど、表紙は辞書のように堅い布のようなもので覆われているし、本の帯も銀色で、どことなく辞書のような装丁だ。
 ちょっと読んでみる。


 辞書好きの子供だった荒木公平が、辞書の編集者になり30年、出版社を退社することに。
 辞書の執筆者の松本先生に、定年の挨拶をする荒木。しかしここで松本先生に暖かいねぎらいの言葉をかけてもらい、思わず嗚咽の涙を流しそうになる荒木。


 ちょ!
 オレまで泣きそうやンか!
 やばいやばい。最近、涙もろいんですよ…。
 本屋の店先で立ち読みしながら号泣するわけにはいかない。
 しかもまだ、これは10ページ目なのだ! 早ッ!
 ということで、すっかり立ち読みする意志を失い、かといって他の本を探すという気にもなれず、レジに向かう。
 帰りの電車の中でも続きが気になって仕方がないのだが、ここで号泣するのもヤバい。ああ、気になる気になる…。

 
 そういうわけで、これから続きを読むのだ。
 ここんとこ短い細切れの文章を読むことが多かったワタクシなのだが、今夜は物語の流れに身をゆだねながら、ゆるゆると舟を進めることにするのだ。いやー、楽しみだっ♪