ーOOO-次の日に向かって
むかーしむかし、あるところに…というか都内某所の下町にある、いつも愉快な弊社なのですが。
弊社は都合上欠員が出て、社員の募集をかけておったということじゃ。はあ、ブラックブラック。
あるとき、就職希望の若者が弊社にやってきたのじゃった。
福島出身と語る彼は、最近東京に出てきたばかりで、仕事を探しているのだと言う。
「福島のほうでは、働き口がなくて…」
それはやはり震災の余波なのでありましょうか。あまり細かいことを突っ込んで聞くのもはばかられ、しかしその窮状を察し、人情下町の和菓子屋さんであるところの弊社は、彼を一発採用としたのでした。
とりあえず初日。朝から晩まで一通りの仕事の流れを体験。
晩ご飯を食べながら「この町は、アパートとか安いんですかね?」などと軽い会話をし、晩ご飯をキッチリおかわりし、じゃ、明日もよろしくねと…いいながら、その日の仕事は終わったのですが。
彼の姿を見たのは、それが最後でした。
っていうか、ていねいな言葉で言うと、初日バックレ。
ぬあーん。
ん−、まあそうねぇ、
弊社は仕事は忙しいし、給料は安いし、ブラックっちゃーブラックなので、まあ、アレだ。
だけどね。
彼は何か夢見て福島から上京してきたのかもしんないけど。
東京に住んでいる人たちは浮かれたようなキラキラした良い生活を送っているように見えるのかもしれないけれど、でもまあ、そんなことないから。地味な仕事をチマチマこなしているヒトも多いから。
震災を抜きにしても、長引く不況だとか消費増税だとかいろいろあって、景気はそれなりに厳しいから。
震災を片時も忘れたことはない…というか、この近辺はいわゆるホットスポットとか言うヤツでひどい目に遭っているから、ちょっとした被災地だったりなんかするはずなんだけど、でも大変なところはもっともっと大変だから大きな声では言えないけれど、でもこの辺もそれなりに大変だから。だからって震災震災ってそればっかりも言ってはいられないから。とにかく次の日に向かって、走り出さなきゃならないから。
ま、なんだ、彼は「福島には仕事がないから仕事が見つからない」とかじゃなくて、彼自身にも何か問題があるんじゃないかなー…などと思うことにしました。