ーOOO-「バクマン。」

 


(ストーリー)
 優れた絵の才能を持つ“サイコー”(佐藤健)と、巧みな物語を書く“シュージン”(神木隆之介)。
 声優志望のクラスメイト・亜豆美保小松菜奈)と交わした約束をきっかけに、彼ら2人の高校生はコンビを組んでプロの漫画家になり、週刊少年ジャンプで一番を目指すという野望を抱く。
 2人は敏腕編集者・服部(山田孝之)に才能を認められ、漫画家としての第一歩を踏み出す。そこに立ちはだかるのは、新進気鋭のライバル漫画家たちと、遥か先を走り始めた若き天才漫画家・新妻エイジ染谷将太)。
 果たして2人は、ジャンプの頂点に立つことができるのか?!

 わたしの観測範囲だと、この映画は賛否両論割れていまして、そこらへんが面白かったので、ちょっと劇場に足を運んでみたのです。
 いやいや、ワタクシ的にはこの映画、たいへん好みで良かったです。


 原作は週刊少年ジャンプで連載されたマンガで、全20巻の単行本の発行部数は、累計1300万部を越えるのだそうです。
 マンガ原作の映画というと、「原作と比べてアレが違う、コレが違う」となって、原作ファンの人はガッカリしがちなものですが。
 ただワタクシ的には、マンガを原作にしてドラマにする・映画にするというと、やはりどこかで改変が入るモノだと理解しております。で、その改変があることで原作ファンは「えっ、この先どうなっちゃうの?」というハラハラを味わうことが出来るものです。結果、残念な出来映えだったとしても、「やっぱり原作は素晴らしいなぁ」というのを再確認出来たりして、それはそれでよし、と。


 映画「バクマン。」は、映画の冒頭でジャンプ編集者・服部が出てくるのですが、原作とイメージがちょっと違うのですね。
 服部を演じた山田孝之さんは、原作の服部のイメージに合わせるために「髪を短く切りましょうか」と提案したところ、大根仁監督に「切らなくていい」と言われたんだそうです。
 つまりこの映画は、冒頭から「原作とはちょっと違う話ですよ」というお断りをしている、と。
 この映画は全体的に原作をなぞりつつも、登場人物含め大胆な省略が行われている。だから、ストーリーの進行方向が少しずつズレていく。
 だからワタシは原作を知りつつも、「えっ、この先どうなっちゃうの?」というハラハラが味わえて、楽しめました。


 この物語の重要なシーンは、マンガの執筆シーンなのですが。
 漫画家さんのの執筆シーン。これはどう考えても絵的に地味な、机の前に座ってコリコリという絵にしかならないはずです。
 話はそれるんですが、先頃、NHKで「漫勉」という、いかに漫画家さんが原稿を仕上げていくか?という番組をやっていました。漫画家さんの執筆現場を垣間見ることが出来て、机の前に座ってコリコリ書き上げていくときのピリピリする空気が伝わってきて、これはこれで面白かったです。
 というかマンガの執筆シーンは、こういうふうに正攻法で地味な執筆シーンの積み重ねを見せていくしかないだろう、と思っていたのですが。


 「バクマン。」でのマンガの執筆シーンは、プロジェクションマッピングとかのいろいろな手法を駆使して、ライゾマティックス的というか、そういう映像に仕上がっていました。
 なんというか、スピード感のある、目に快楽を与えるような映像。
 作者のアタマの中でマンガがほとばしって、あふれだすイメージを次々に原稿用紙にたたきつけていってるような、そういう映像でした。


 あの感覚は、ブログを書いている自分にもちょっとわかるんですよね。
 書かずにいられない、あふれ出すイメージを、とにかくキーボードにたたきつけて文章にしていくような感覚。
 頭の上で、ひらめきの電球が何度もピカピカひかるような感覚。
 あの高揚感、創作欲、パッションを、ああいうカタチで映像化した、というのがとにかくすごいと思うのです。


 それでいてこの映画は、「自分が書きたいように書いているだけではダメなんだ」という耳の痛いことを、観客に、創作者に、メッセージとして伝えてくるのです。


 いやー、なんかビリビリくる映画でしたわー。