ーOOO-応援団のようなもの

 いつもゆかいな弊社の後輩君は、和菓子屋の職人でありながら、実はプロボクサーでもあったのだった。
 んで「今度試合をやるから、ぜひ見に来てください」と言われた。
「いやー、実は今回の試合のずっと前に、デビュー戦をやったんですよ。でもなんだか恥ずかしかったんで、その時は会社のみんなは呼ばなかったですけど。そしたらその試合の時、相手の選手はすげーたくさん応援を連れてきていて、試合中に相手の応援のみんなが『○○、がんばれっ!』とか名前を呼んだりしてて、オレはスゲーせつないって言うか、アウェーで試合をしてる感じっていうか、なーんか…」
 おおお、話を聞くだけでツラい! わかったわかった。こんなオレで良かったら、次の試合は応援させてもらうことにするよ!
 ということで、彼からチケットを買った。試合当日は弊社から数名が応援に駆けつける事となった。
「んで、プロのボクサーって事は、ファイトマネーとかは出るの?」
「いや、えっと、このチケットがファイトマネーなんですよ。チケットの形でファイトマネーを支給するから、コレを売ってお金にしろ、みたいな」
 はー。そういう仕掛けだったんですか。ボクシングで飯を食うのも大変ですな。


 まあ、とにかくそういうワケで、弊社社員数名によるボクシング応援団のようなものが結成された。
 応援団だから、彼にもっと強くなってほしい。会社の日常の業務の中で、彼に無理なくボクシングのトレーニングを積んでもらうには… ということで、重さ30キロの砂糖袋を担ぐとかいった重労働は彼に押し付ける… もとい、彼にお任せして、筋トレしてもらうことにした。
「え…、ちょ、ちょっと」
 ゴミ捨てとか床掃除とか、そういうのもお任せすることにした。
「えー…」


「それでさ、おまえは今回の試合に勝ったら、何を歌うの?」
「いや、オレは亀田サンじゃないんですから、そーいうことは…」
「でも何かキャラ立ちするような、アピールするような何かをしたほうが人気が出るぜぇ」
 我々応援団一同はいろいろ相談し、
『試合に勝ったら、リングの上から紅白のモチをまく』
というのはどうだろうか? という提案をした。和菓子屋らしいアピールで好感が持てる。すばらしい!
「…絶対やりませんから」