ーOOO-サッカー小僧

 問屋さんの担当営業マンが、先日から新しい人にかわりました。
 前の担当さんも良い人でしたが、今度の担当さんは新人で、ガッツにあふれるタイプっぽい。
 で、商談などを話しつつも、無駄話が弾んじゃったりして。
「ワタシは以前はサッカーをやってたんですよ」
 あー、身体がガッチリしてますもんね? かなり鍛えてたんでしょ?
「ええ、一応、サッカーの名門校だったもんですから…」
 サッカーの名門校で、サッカー部員ってだけでスゴいじゃないですか!
「いやあ、サッカー漬けでしたからねぇ。ああいうところでサッカー部員だと、勉強しないでサッカーばっかりやってたもんですから、どうも頭の方がからっきしで」
 名門っていうと、じゃあ、全国大会に出ちゃったとか?
「ええ、まぁ」
 うわ! 超スゴいじゃないですか!
「いやあ、補欠だったから、胸は張れないんですけどね」
 じゃあ、同級生がJリーガーだったりとかするんですか?
「もちろん、います。あと、こないだワールドカップに出ちゃったヤツとか」
 うわスゴい! 友達がニッポン代表なんてスゴいじゃないですか!
 友達が出てる!って思うと、ついつい応援に熱が入るんじゃないですか?
「いやぁ、そのへんは、ちょっと複雑な気持ちって言うか」
 って言いますと?
「あのころ同級生で一緒にサッカーやってたヤツが、すっかり立派になっちゃって、日本中で知らない人はいないくらいだし、テレビのチャンネルをひねればあちこちに映ってるし、すっかり雲の上の人になっちゃって。
 で、それに引きかえ、サッカーの道をあきらめて、こうして仕事をしているオレは一体何なんだろう…って思っちゃうことがあるんですよね」