ーOOO-なじみの店になじまない

 なじみのラーメン屋へいく。行きつけの店だったのだが、ここ3ヶ月くらいはトンとご無沙汰していた。
「ぃらっしゃい」
 暖簾をくぐれば、店の大将は相変わらず元気そう。
 味噌チャーシューメンとチャーハンを注文。
 一口すすって、いつもの味に安心する。このお店のラーメンはボリュームが多くて、味付けはやや薄め。ズズッ、ズズッとすすって、夢中でスープまで飲み干す。
 お会計の時、店のおかみさんが
「あら、お客さん、ヤセましたね」
と言った。
「…ええ、まぁ」
 以前この店に来た時に、わたしが「ちょっとダイエットしようかと思って」と言ったことを覚えていたのに違いない。
「あらー、すっかりやせちゃったわねー、見違えたわー」
「…はあ、まぁ」


 家に帰ってから思う。
 何であのときオレは、「いえ、痩せてませんよ」って言えなかったんだろう。
 っていうか「むしろ、3ヶ月前より太ってます」って言えなかったのは何故だろう。
 ついうっかり見栄を張ってしまった…ッ。
 弱い。
 あと、ヤセるどころかむしろ太ったオレに「あら、お客さん、ヤセましたね」と言った、ラーメン屋のおかみさんの心遣いが染みた。
 いらぬ気を遣わせてしまったなーと思うと、あの店に行くのが心苦しい気がして、なんだか足が遠のくオレなのだった。