兄とサカつく ─◯◯◯-

うちの兄さんはゲームが好きだ。
好きなのだが、あまりゲームが上手ではない。
アクションゲームはお好みではないらしいが
根気と情熱はあるので
サクラ大戦で全パターンのエンディングを見たりしている。

サッカーファンである兄がいちばん好きなのは
もちろん「サカつく」だ。
いまだにドリームキャストサカつくで遊んでいるので
最新版ではない。
何年前から遊んでるんだ、兄よ。

ところが兄はゲームが上手ではない。
なんべんやってもなかなかクリア出来ない。

「やったよ、とうとう5年目に突入だよ!
 今度は補強もうまく行ってるから
 J1で優勝できる気がする!」

とか言ってた一時間後には
いつのまにかゲームが1年目の4月に戻ってたりする。

兄はゲームがあまり上手ではないが、
このサカつくを私が攻略本と首っ引きでプレイしても
J1で優勝出来たためしがない。
っつーか、難しすぎて放り投げた。
兄がプレイしているバージョンのサカつく
かなり難しいのではないかと思う。

サカつくは、ゲームを進めながら
自分のチームの選手の話を聞くことも大事らしい。
フォワードはまかせてくれ」とか
「もっと基礎トレーニングが必要だ」みたいな
前向きな話が続く時は良いのだが
チームの負けが続くと
選手たちの中で不満が高まる。
「あの選手と俺は合わない」とか
「こんなチーム、やめたい」とかいった
一触即発のムードが高まる。

グチをマメに聞いてやることで選手のストレスが下がる、
らしい。
兄はマメだから最悪の事態を回避すべく
選手たちのグチを聞いてやる。

最下位が続いてチームのムードが最悪になると、
選手のグチはチーム批判からオーナー批判へと移る。
どんなセリフだったかあまり細かく覚えていないが、

「オーナーは本当にこのチームのことを
 真剣に考えているのですか?」

「あなたにはサッカーチームの
 オーナーをする資格はない!」

とか、それはそれはキツい言葉が並ぶ。
いや、違うよ。
ゲームが苦手だから上手くいかないかもしれないけど、
うちの兄はこのチームのことを真剣に考えているんだ。
私なら絶対リセットボタンを押すような場面でも
あきらめずに君らの話に耳を傾けているんだ。
ゲームの中の仮想人物の君らに
兄を責めてほしくない。

ゲームの開発の方々。
「難易度を下げてくれ」とは言わない。
でも、
ゲームが上手くはないんだけどゲームが好きなヒトに
悲しい思いをさせないでほしい。
ちょっとアレはセリフがキツすぎるんじゃないかなと思う。

兄は今でもそのサカつくを遊んだりするので
すげえと思う。ホントすげえよ。
一回ぐらいJ1で優勝させてやりたい。