野良ネコと虹と ─◯◯◯-

昨日は変な天気で。
午前中は晴れていたのに
昼過ぎから雲が出てきて、風は強く吹き、
そして夕立が降った。
上の方の黒い雲はどんどんと筋状に伸びて行き、
その下の方の白い雲はすごい早さで上空を飛んで行く。
雨が弱くなったスキをついて会社を出る。

遠くない駅までの道のりをやや速足で歩いていたら
ネコ発見。
風はやや強く、小雨の降りそぼる下、
雨宿りもせず、ちんまりと座っていた。

あちら側からネコおばさん風の人が
たたたとネコに歩み寄る。
と、ネコはするりとその手をかわして
私の目の前をととととと、と横切って行く。

そのネコの行く先を目で追っていたら、
ネコの後ろ姿から
お腹が左右にパンパンに膨らんでいることに気が付いた。
ふと、子ともがいるのかも? と思った。

話はさかのぼるけれど、
一年ほど前に
ウチの会社の塀と建物の透き間に
落っこちた子猫がいた。
冷たいコンクリートの地面の上でふるふると震え、
にゃーにゃーと悲しそうな声で鳴き、
塀の上からは親ネコや兄弟たちが
心配そうにのぞき込んでいた。
そのときワタシが助けようとあれこれしているうちに
いつのまにかその子猫たちはどこかへ行ってしまったのだけれど。

半年ほど後に会社の近所で
その時の子猫と兄弟ネコ達がじゃれあっているのを見た。
もちろんその時の子猫とは違うかもしれない。
でも多分そう。模様とかが。
向こうはこちらのことなんか覚えていないし、
近づいて行ったらパッと散って逃げてしまった。
でも、
ああ、元気でいるんだなぁと安心した。

そして昨日見かけたそのネコは多分、
塀のすきまに落っこっていた
あの時の子猫なんじゃないかな、って気がする。
模様とかが多分そう。
そうか、メス猫だったのか。
そうか、お母さんになったのか。

昨日はそのあと
電車を乗り換えたり、本屋で立ち読みをしたりしているうちに
いつの間にか雨は上がっていて、
一面に濃いオレンジ色の夕焼け空が広がっている。
ふと空を見上げれば、虹がかかっていた。
夕暮れ時の虹は
高い高い場所にかかる。
行き交う人は足早で、決して空を見上げない。
電車を待ちながら、
ワタシは一人で虹を見上げる。

一面オレンジ色の空に負けないくらい
大きくくっきりとした虹を見ながら、
「おなかが横に広がってるって事は、女の子が産まれるのかなぁ?」
とか一瞬思った。
んなこたぁない。
でも、
おかあさんネコに連れられたメスの子ネコが
そろりそろりと塀の上を歩くところを
想像したりした。