禁煙パイポ中毒 ─◯◯◯-

中学生のころ、
どういうわけだかパイポを吸うのが流行った。
あ、パイポは禁煙する時に吸うやつです。

タバコを吸う訳じゃないから悪いことではないんだけど、
ちょっと不良な気分も味わったりして。
昼休みに教室でウンコ座りして吸って、
「やべえ、先生きたよ!」
でサッと隠したりして。

んで、あるとき友達がタバコ風のパイポを持ってきた。
パイポなんだけど、
火がついたタバコを吸っているように見えるやつ。
なんだか、みんなすごく興奮した。

んでもってお調子者の友達が調子に乗って、
学校の帰り道にそれを吸ってみた。
最初はおどおどと。
部活の何人かで歩いていたので、
その真ん中でそいつは小さくなっていた。
周りにいたみんなは、
悪事に加担しているような、
後ろめたくて妙な高揚感を味わった。

「これ、怒られるかなー」
「いや、捕まったら
 『タバコじゃないですパイポでーす』
 って言えばいいジャン」

そのうち大胆に。
先頭を立って歩いて。
肩で風を切って歩いて。
最後にはスパスパと吸って、
灰を落とす真似までしてみた。
おいらたちは後ろで
「やべーやべー」といいながら
手ぇたたいてゲラゲラ笑ってた。

んで、友達の家に行って、
みんなでファミコンやって帰った。

次の日の朝、緊急全校集会があった。
なんだかしんないけど先生方がピリピリしている。
全校生徒が体育館に集まったあと、壇上の校長が言った。
「この中に、タバコを吸った者がいる!」