ーOOO-シャッターチャンスは一度だけ

 仕事中にふと空を見上げたら、夕焼けがきれいだった。
 オレンジ色の夕焼け空にすこし雲がかかっていて、雲のシルエットが薄紫色で、雲のフチは光っているような。
 あわてて自分のロッカーからケータイを取り出して、空が見渡せるような場所に行ってカメラを構えたときにはもう遅かった。雲の向こうに夕日は沈んじゃってた。
 結果、ご覧の写真のような感じに。


 雲とかの写真を撮るってーのは、止まっている物を写すような感じだけど全然そうじゃなくって、シャッターチャンスはあっと言う間に逃げていってしまうモノなのだ。
 ウソだと思うなら、試しに撮ってみるといい。
 たとえばそれは運転中。
 窓の外を流れるビルの谷間に美しい夕日が沈んでいく。
 運転中にカメラを構えてすぐ撮る訳にはいかず、車を安全な位置に移動させてカメラを構える。と、なんかちがう気が。
 アレは夕日が美しいんじゃなくて周囲の風景も含めて美しかったのかな、と思ってさっきの場所に戻ってみる。
 たぶん正確に全く同じ位置には戻れない。
 なぜって、車を運転している最中にみた風景は、車の運転席の高さから車道の真ん中で見た風景だから、歩道を立って歩いていては「あの風景」には戻れない。
 そうこうするうちに、夕日はどんどん沈んでいって、「あの夕焼け空」を撮ることはできないままに日が暮れてしまう。
 もう夜、なのだ。


 夕日といえども、シャッターチャンスは一度だけだ。
 そんなわけでワタシは、たった一度だけのシャッターチャンスを毎日待っている。
 ちいさい楽しみがいっぱいあると、毎日はけっこう楽しい。