ーOOO-みかん
そういえば最近みかんをあんまり食べないなあ、と思った。
で、さっそく買ってきて食べ始めたんだけど、どうも勝手が違う。みかんになかなか手が伸びないのだった。
去年からひとり暮らしをしているんだから、一人分しか食べないわけで。減る量が少なくなって当然だ、ってーのはあるだろう。
でも、それだけが理由じゃない気がする。
そういえば、実家にいたころは。
コタツの上にみかんが山盛りになっていて、それを家族みんなで奪い合うように食べていた。
のんびりぬくぬくとコタツに肩まで埋まって、コタツの上に手だけをひょいと出してみかんをつかみ、テレビを見ながら皮をむいて、口に運ぶ。
ふと気がつくと、コタツの上にあれだけ山盛りだったみかんが全部なくなっている。
家族同士の無言のにらみ合いがはじまる。なんとなく誰かが根負けして、あるいはみかん食べたさにコタツを抜け出して、みかん箱からイヤと言うほどみかんを取り出して、コタツの上にのせる。
ウワっと四方八方から手が伸びて、みるみるみかんが減っていく。
あの家族一同でみかんを奪い合うような感じが、ひとり暮らしには欠けているのだった。
しかしそれにしても、冬にみかんはよい。
食べやすいし、ビタミンも取れるし、特にここ何日かみたいな空気が乾燥しているときは、口にうるおいが与えられる。
それからワタシの場合は「そういえば家にみかんがまだ残ってたっけ」と思うと、コンビニで変な菓子パンなんか買わずにすむ、というトコがよろしい。
で、こないだはちょっと奮発して良いみかんを買った。
ウチの駅前の果物屋さんのみかんは、ちょっとお高い代わりにさすがに甘くてうまい。小ぶりで皮が剥きづらいみかんはハズレが少ない。さすが果物屋さんのみかんだけある。袋から出して食べるとどれも粒ぞろいで、みな同じように甘い。
実家にいた頃はみんなすごい勢いでみかんを食べていたので、箱でみかんを買っておいてもアッという間にカラになってしまった。
だから質実剛健な父がみかんを買うときには必ず、スーパーに並んでるヤツの中で一番安いグレードのみかんを買うのだった。
安いみかんの皮はぶかぶかで、袋に身がびっしりと入ってなくて、すかすかしていたり変に水っぽかったり、甘くなかったり、酸っぱかったり。同じ箱の中のみかんでもバラツキがあって、ずいぶんと差があったものだ。
ワタシはそんなみかんを食べながら「値段なんかいくらも違わないんだからもうちょっと良いみかんを買ってきてよ」と、父によく不満を言ったものだった。
今はこうして、ひとりで甘くて美味しいみかんを食べている。
けれど、実家のみんなで食べた当たり外れのあるみかん、というのもなんだか懐かしく思えるのだった。