ーOOO-「長い長いさんぽ」

 動物が大好きだけど自分では飼ったことのないワタシは、動物マンガを結構読む。そのマンガを読むことで、自分が動物を飼ったような気持ちになってみるのが好き。
 その中でも須藤真澄さんの書く「ゆず」のシリーズが大好きだった。須藤真澄さんは、ゆずというネコを飼っている。ゆずとの出会いから、ゆずと暮らす楽しい日々をエッセイ的なマンガに書いていた。クスッとするような、ほんわかした感じのマンガだった。何度も何度も読み返した。
 だからゆずは、まるで隣の家のネコのような、あるいは自分で飼っているかのような、よく知っている大好きなネコだった。
 ぽかぽかとした日だまりのような暖かくて楽しい日々は、マンガの中で永遠に続くかのように思っていたけれど、しかし時間はどんどんと過ぎてゆく。
 今日、本屋でふと目にした須藤真澄さんの最新刊「長い長いさんぽ」。その帯には「ゆずとの最後の日々」と書かれていた。
 本屋の店先で、ゆずが亡くなったということにとてもショックを受けた。だが、いつかこういう日がやってくることも知っていた。
 とまどいながらも迷わずに、買って読んだ。
 このマンガの中では須藤さんの深い深い悲しみや混乱が余すところなく描かれている。かといって、声高に悲しみを叫ぶのでもなく、ドラマチックに描いているのでもなかった。「あのとき、なにがあったか」「どんな気持ちだったか」という辛い自分の記憶を掘り起こして記してあった。


 この先、何を書こうかと迷っているんだけれど。
 飼いネコが亡くなった時のことが書いてあるマンガを「オススメです」と言っちゃうのは何か罰当たりな気がする。あと「ショッキングなマンガなのかな」とか思ってもらうのは本意ではない。そういうマンガではない。
 もしも読むのなら、ぜひ、ゆずとの出会いの話などの書いてある昔の単行本を読んでいただきたいんだけれど。でも、「今はこのネコちゃんは亡くなったんだよねぇ…」とか思いながら、少し心に影の差した感じでこのシリーズを読んでもらうのも本意ではない。そーいうんではなくて、なんでもない時に、気軽にクスクスと笑って読んでいただきたい。


 だから。
 ゆずというかわいいネコがいたこと。
 ゆずは飼い主と幸せな日々を過ごしていたということ。
 ゆずは今はもういないと言うこと。
 そのことがワタシは本当に悲しいということ。


 それだけ。