ーOOO-がらがらキョロキョロ

 がらがらの電車に乗って、誰も座っていないガラガラのシートの端っこに座ったら、向かいにきれいなオンナのヒトがひとり座っていた。
 他にだれもいない電車の席で、見知らぬ二人が向かい合った。
 そーいうときワタシは、どうも目のやり場に困る。
 正面の席の回りに誰もいない時は、ついつい正面に座っているヒトを見てしまう。でも別に見つめたいワケじゃない。見てちゃマズい気がする。目があうと気まずい気がする。
 こういう時は電車の中吊り広告を読んでしまう。そしてワタシの視線は上へ。広告を一枚読むと、視線は次の広告へ。
 なにもかもを読みつくして、ふと正面を見る。
 回りに何も無いから、またオンナのヒトが目に入っちゃうんだけど、やはり見てちゃまずい気がする。またまた目のやり場に困る。
 で、ぷいっと上を見る。一回読んだはずの中吊りを更に丹念に読む。視線は右から左、左から右へ。雑誌の記事の見出しを全部読む。新築マンションの価格及び所在地及び最寄り駅などについて全部読む。電車の路線図上で現在位置および進行方向を確認する。
 とうとうすっかり読むところが無くなって、不意に正面を見た。
 向かいの席のオンナのヒトも、上を見て左右をキョロキョロしていた。