ーOOO-ピーポくん、しゅつどうのまき

 こないだのクソ暑い休日。
 いつも愉快な弊社。
 の、駐車場。
 なにやら不審な車が停まっていて、その裏でゴソゴソと誰かが何かをやっていた。
 何事ですかっ!?
 そーっとのぞいてみたら、ピーポくんの変身中だった。
 関東圏以外の方に説明すると、「ピーポくん」と言うのは警視庁のマスコットキャラクターだ。この残暑の厳しいクソ暑い中、ピーポくんの「中のヒト」はふうふういいながらまさに今、変身中なのだった。
 んで、ピーポくんの着ぐるみを着る前に、まずおなかの回りにウレタンのようなモコモコしたものを巻き付ける必要があるようだ。かなりボリュームがあって、その状態だとピーポくんの頭の部分よりも胴回りが大きく見えた。
 それから「皮」を着る。おなかに付けたモコモコよりもあきらかに小さい皮。すんなり入るはずがないサイズなのに、中のヒトはむりやり着込もうとして「ふんっ!ふんっ!」と必死で頑張っている。
 あまりにも大変そうなので、つい「大変ですね」と声をかけたら、「ええ、そりゃーもう、ね」と、中のヒトはニカッと笑った。
 中のヒトはお巡りさんなのか、交通安全協会のヒトなのか? 人の良さそうな子煩悩なオトーサン、といった感じの人だった。


 次にようすを見にいったら、ピーポくんは変身済みだった。
 そして、お巡りさんといっしょに駅前に向かって歩いて行くところだった。交通安全運動か何かのキャンペーンらしい。
 ミッチリとつまったウレタンのおかげで、ピーポくんのお腹の回りにはパンと張りがあり、かわいらしい3頭身の姿になっていた。はっはぁん、あのウレタンがないとうすべったくってショボい着ぐるみになっちゃうわけだね。
 んで炎天下にもかかわらず元気よく歩く、っつーかスキップしているピーポくん。中のヒトは汗だくなんだろうなぁ、と思うとつい笑ってしまう。
 横断歩道をわたる時は、小首をかしげてピッと手を上げて、スキップしながらわたっていた。アレは全身を横に弓なりに曲げて、ひじから先だけを真上に上げながら、スキップしているんだろうなぁ。
 後ろから自転車がくると、後ろにいたお巡りさんが「自転車が右後方より接近」と、ピーポくんに指示をしていた。
 さっと左によけるピーポくん
 スマイル&敬礼。
 自転車に乗った女性も思わず「ごくろうさまでーす」と頭を下げる。


 身も心もピーポくんになりきっている中のヒト。
 よくわかんないけど、あの中のヒトは「ピーポくんらしくふるまうには」「かわいらしい動きに見せるにはどうするべきか」について日夜たゆまぬ研究努力をしているのではないだろーか?
 っていうか、あの中のヒトの「ニカッ」を思い出すと、犯人を逮捕する姿や拳銃を握っている姿は似合わない気がした。
 捜査よりもピーポくん役。
 世の中に、そういうお巡りさんがいたっていいじゃない、とか思った。