ーOOO-カタいガム

 私は会社に虫歯予防ガムを常備していて、ソレを噛みながら仕事することが多い。
 んで今日は後輩君がソレを噛みながら
「…なーんか、…今日のガムは、…カタいっすねー」
「寒いからかねぇ? でも、口の中にあるから寒さは関係無いはずだけど…」
「…うわ、ガム噛みながら水を飲むと、カタさが復活しますよ!」
「どれどれ(水を飲む)… これは… カタいねぇ…」
「こーんなにカタいと、アゴが疲れますねぇ」
「でもなんか、噛む行為が脳を刺激してアタマが良くなる、とかいう話がなかったかな?」
「いや、こんなにカタいと… 別に頭良くなんなくてもいいかなぁ…」
「頭が良くなるより先に、アゴが鍛えられそうだよなぁ。」
アゴの回りの筋肉が発達すると、顔がデカくなりそうじゃありませんか?」
「あー、デカくなるんじゃん? そういえばアゴの回りをマッサージすると顔が細くなるとか?」
「そういうもんですか?」
「らしいよ。あと、アゴのまわりに何か注射して、アゴの筋肉を弱らせて顔を細くするとかしないとか? なんだっけ、細菌を注射するんじゃなかったっけ?」
「細菌を注射するって… そこまでしてキレイになりたいんスかねぇ? あ、そういえばスキーの事故にあった女の人がいて、アゴを骨折したから固形物を食べることが出来なくて、一カ月流動食と点滴で過ごしていたら、アゴからスッキリやせちゃった、って話を聞いたことがありますよ」
「そーいうのもイヤだよねぇ… って、あ、『アゴを骨折するだけで、みるみるダイエットできる!』 ってーのはどうだろう? 『アゴ骨折ダイエット』 なっ!」
「えー、そーいう痛いのはイヤじゃないですか? それに第一、ヤセる以外にメリットあるんすか?」
「うーん…、たとえば、単なる美容整形だと自腹で入院しなきゃならないけれど、アゴを骨折して入院だと保険が降りるじゃん? あと、骨折だと有給休暇をとりやすい、とか」
「なるほどねぇ… メリットありますねぇ…。じゃあ、『アゴ骨折ダイエット』 のブームが来るかも知れませんねぇ。 …あ、オレ、殴り屋やりますよ。『上手にアゴを骨折させます!』 みたいな?」
「あー、キミはボクサーだもんねぇ?」
「『動かないで! 痛くないから!』 とか言いながら、次から次へと女の子たちのアゴにキレイに一発、たたき込むんですよ」
「ソレを続けているうちに、アゴに必殺パンチを打つのが得意になって、キミは最後にボクシングの世界チャンピオンになれかもよ?」