ーOOO-暗転、一転

 こないだ近所のショッピングモールに行って、シネコンで映画を見てきた。
 劇場内が暗くなり、映画の予告編がはじまる。
 と、急に予告編が止まり、一転して場内にパッと電気が灯る。
「火事です。火事です。」
 サイレン音。
「お客様にお知らせします。ショッピングモール3階から火災報知機が作動したとの知らせが入りました。みなさん、おちついて速やかに避難してください」
 場内がザワザワし始めた。
 ここでワタシは速やかに、でもあわてずに避難。
 うすぐらい劇場の通路はヒトでごったがえしている。ちいさい子供たちは恐怖のあまり泣き叫ぶ。
 でもパニックにはなっていない。みんなざわざわしながら、ワリと落ち着いて行動していた。
 劇場を出て、ショッピングモールに抜ける。
 明るく広い建物内に、煙は漂っていない。
 暗く狭い劇場から出たという開放感もあってか、ここではヒトは皆、落ち着いていた。
 でもいちおう警報は鳴り続けているので、ワタシはそのまま建物から退避。
 この時点で退避するヒトはほとんどおらず、店員さんもお客さんも呆然とその場に立ちつくし、あるいは「何?何?」「煙なんか出てないじゃんかョ」などと言い合っている。
 特に避難誘導されることもなく、混乱することもなく、建物の外に速やかに退避をすませた。
 あの劇場の入り口はごった返していたし、ショッピングモールのお客さんもかなりいたのに、建物の外に避難したヒトは数えるほどしかいなかった。
 いったん外に出てしまうと、館内放送が聞こえないので中の様子がうかがえない。
 ただ、シーンとしている。
 何も知らない新しいお客さんがどんどん中に入っていく。
 止めた方が良いんだろうか? でも、なんか誤報っぽい感じがするな、火も煙も見えないし…。
 と、ここで館内放送。外では良く聞こえないので、中に入って耳をすませて良く聞くと、「誤報でした」とのこと。
 やれやれ。
 ホッとして劇場に戻った。
 中断はかれこれ10分くらいだったか。私たちのいたスクリーンは予告編の最中だったので、中断した場所からそのまま再上映になった。本編の途中だった他のスクリーンはどうだったんだろう? 場合によっては払い戻しだったかもしれない。
 落ち着かない気分のまま映画を見始めたので、この日はなかなか映画に入り込めなかった。


 ところで、「非常時にパニックにならないようにしよう」という心が強すぎると、イザという時に避難が遅れる場合があるので危険だ、という話がある。
 今回の場合、建物の外に逃げるヒトは非常に少なかったので、コレは本当だなぁと実感した。
「パニックにならないようにする」ということと、「避難する」ということは両立できるものなのだ。
 イザというときは、なんだかカッコ悪くても逃げたほうがイイと思うッスよ。