ーOOO-世界一のウイスキーを味わい尽くす

 世界一のウイスキーを味わうイベントに参加したお話の続きです。
 とうとう世界一のウイスキー「シングルモルト余市1987」を飲んで、その風味に感動したワタシ。
 その感動と興奮の余韻もさめやらぬうちに、次に試したのが「シングルモルト余市1987 non-chill filtered」だったのでした。
 さて、「シングルモルト余市1987」と「シングルモルト余市1987 non-chill filterd」。
 この2つは、ドコがどう違うんでしょうか?
 そのまえに「シングルモルト余市1987」の解説を少しだけ。

シングルモルト余市1987」


 そもそもシングルモルト余市1987は、ニッカウヰスキー余市蒸溜所で1987年に蒸溜し20年以上熟成した3タイプ4種類のモルトウイスキーを、バランスを重視してバッティング…混ぜ合わせられたウイスキーです。
 いわゆる「20年もの」のウイスキーは、熟成期間が最低20年以上のウイスキーが使われているという意味でして。だから風味を増すために、熟成期間が21年とか、25年とかの原酒が使われることもあるのです。
 それを「シングルモルト余市」ではあえて「1987年」に作られた、ちょうど20年もののウイスキーにこだわって作ったのだそうです。なおかつ発売が11月だったので、ちょうど20年にこだわるために12月製造の原酒は使われていません。


 アルコール度数は、原酒を樽から出したままの状態に近い55%。普通のウイスキーが40〜44%程度なので、やや高めです。
 ウイスキーのアルコールは、それ自体が香りや風味を溶かし込む溶媒の役割を果たしています。もしも度数を下げれば、その分だけ成分が溶け込めなくなってしまいます。
 久光チーフブレンダーは、度数は高いかもしれないが、20年という熟成期間の中でウイスキーに溶け込んだ成分を余すところなく生かしたいと考え、あえて樽出し度数のままで行こう、と決断したのだそうです。


 こうして作られた「シングルモルト余市1987」は、その豊かな風味が評価され、とうとう世界一になった…というのは何度もお話ししたとおりです。

では、「シングルモルト余市1987 non-chill filterd」って?


 こうして世界一になった「余市1987」。しかし、限定販売だったので、もうお店では手に入れることが出来ません。
 世界一になった記念に、もう一度「余市1987」を発売しよう、という声が上がりました。
 しかし、全く同じモノを発売しても意味がない、と久光チーフブレンダーは考えました。


 ところで、ウイスキーは樽詰めの前に「冷却濾過(chill filtation)」という工程があります。
 ウイスキーを冷蔵庫の中にしまっておくと、成分の一部が固まって、白い濁りが発生することがあります。品質的に問題はないのですが、やはり見た目が良くないということから、工場で樽詰めの前にいったん冷却し、この濁りを濾過してから出荷されているのです。
 濁りというと聞こえは悪いのですが、しかしその濁りもウイスキーの中に20年かけて溶け込んでいった味や香りの一部なのです。
 そこで、今度再発売される「余市1987」ではこの冷却濾過の過程を省き(non-chill filterd)、そのまま瓶詰めして出荷することにしたのです。


 こうして「シングルモルト余市1987 non-chill filterd」は、樽から出した原酒の風味をそのまま生かし、世界一になった「余市1987」よりも一段と薫りの高いウイスキーとなって、発売されることとなったのです。

至福のテイスティング


 「余市1987」と「余市1987 non-chill filterd」、2種類のお酒をテイスティングすることとなりました。
 先ほどのテイスティングで「余市1987」は水で割りながら味わっていきましたが、「余市1987 non-chill filterd」は割らずに、ストレートで楽しみました。
 また、コレに限らず、「余市20年」なども試飲することが出来たので、参加者は各自、自分好みの飲み方をオーダーして、あれこれと楽しみました。
 
 
 
 ハイボールを頼んでいた参加者の方がいたので、バーテンダーさんの手さばきをカメラに納めてみました。
 ワタシはロックで「余市20年」を注文しました。
 「余市1987」も、「余市20年」も、同じ20年物なのに味の方向性が少し違います。余市20年は20年という時間を感じる、ややどっしりとした味わいだと思いました。
 
 ウイスキーを普段自分で飲むときはロックが多いです。
 氷が溶けてきて、すこしずつ味が変わっていくのが楽しいなぁ、と思っていたのですが。
 でも今回、試飲をいろいろやってみたら、やや冷えているか常温なくらいの温度で飲んだ方が、味も香りも良くわかって美味しいなぁと思えました。
 ロックだと氷が大きいからか空気の中に香りが逃げていかないのはよいのですが、風味が感じにくくてもったいないなぁと思いました。

世界一のウイスキーを味わいたいアナタへ!


 さてさて、ここまで記事を読んできて、「いいなぁ世界一のウイスキー、美味しそうだなぁ…」とか「一度で良いから飲んでみたいなぁ…」とか思ったりしませんでしたか?
 そんなあなたに朗報です!
 「シングルモルト余市1987」のワールドウイスキーアワード受賞を記念して、ニッカウヰスキーでは「シングルモルト余市1987 non-chill filterd」を発売しました。
 ニッカの公式ページでは、現在購入受付を開始しています。(2008年5月15日(木)10時〜5月29日(木)10時)
 限定約1350本、価格は一本2万円です。
 2万円!
 高いっちゃー高いですが、同じくWWA世界一に輝いたサントリー響30年は10万円しますから。


 さてさて。
 「2万円なんて払えないよ! でも一口飲んでみたい…」とか、「直接ブレンダーさんとお話が出来るなんて、うらやましいなぁ行きたかったなぁ、イベントに…」とか思ってるアナタにも朗報です!
 2008年5月23日金曜日に、今回と同じく南青山のニッカブレンダーズバーにて、
『「シングルモルト余市1987」のワールド・ベスト・シングルモルト受賞記念テースティングと授賞報告会』
が、開かれるそうです。
 久光チーフブレンダーとの記念テースティング会と授賞式の報告会、「シングルモルト余市1987 NON-CHILL FILTERED」のスペシャルテースティングも行なわれるそうです。
 これは有料のイベントで、予約が必要になります。詳しくは、直接ブレンダーズ・バーにお問い合わせください。(→ブレンダーズ・バー)(→イベントカレンダー


 ブレンダーズ・バーでは、通常の営業日でも「キーモルト&カフェグレーン テイスティングセット」など、面白そうなメニューが用意されているので、ウイスキーを飲み始めのワタシは一度コレを試して見たいなーと思っています。
 
「キーモルト&カフェグレーン テイスティングセット」は、6種類の個性的な味わいを楽しみながらテイスティングをすることが出来ます。3000円です。

次回予告


 テイスティングのレポートはこれで終わりになります。
 ですが、あと一回だけ、ウイスキーの話をさせていただきたいと思います。
 長くなりましたが、ぜひお付き合いください。(→「オトナ」のウイスキー、余市1987