ーOOO-"Windows Life Without Walls"...「壁のない世界へ」

 マイクロソフトCEATEC JAPAN 2008の基調講演において、新しいコンセプトとして
 "Windows Life Without Walls"...「壁のない世界へ」
というテーマを展開した。
 急速に変化するデジタルライフ環境。PCの枠を超えいくつものデバイスをソフトで結びつけ、その壁を壊していく。そして新たなライフスタイルの創造と提案をしていく、というものだ。
 壁のない未来に一体どのような世界が待っているのか、ちょっと覗いてみることにしよう。

"Windows Life Without Walls"...「壁のない世界へ」

 マイクロソフトはそもそもコンシューマー向けの製品からはじまった。
 1番売れたのはMS-DOSだが、次に売れたのはフライトシミュレーターであり、タイピング練習ソフトであった。
 
 すばらしい体験をコンシューマーにどう届けようか、ということがマイクロソフトの原点である。それを忘れてはいないか? そこにもう一度立ち戻ってみる。
 お客様にすばらしい体験をしてもらう。感動してもらう。そんな体験を毎日してもらう。それはマジックであり、それが生活をゆたかにする。
 いくつものデバイスをソフトで結びつけ、その壁を壊すことでお客様にすばらしい体験をしてもらう。
 全てのデバイスWindowsが使われて、気がつけば常にWindowsがそこで動いている。Windows Vista, Live, Mobileを連携させることにより、より快適なデジタルライフスタイルを実現する。
 これこそがマイクロソフトの次世代コンシューマービジョン"Windows Life Without Walls"...「壁のない世界へ」なのである。


 では「壁のない世界」とはどんなものなのだろうか? 実際の製品紹介を通してその例を見てみよう。

TVとPCとネットの壁を崩す

地上デジタル放送対応のWindows Media Center搭載PCが出荷開始

 2008年8月20日富士通から地デジ対応Windows Media Center搭載PCが出荷されたのを皮切りに、各社から順次発売になる予定である。なお地デジ対応Windows Media Centerは、Windows Updateでの提供や、パッケージ版での提供予定はなく、PCメーカーからの搭載PCとしてのみ提供される。
 席上では実機でのデモが行なわれた。
 
 私見では、番組表の切り替えは瞬時であり、ワンセグメニューもまた瞬時に表示される。当然番組のチャンネル切り替えも高速であり、この快適さからこれからは大画面のPCで地デジを見るのが主流になるか? と感じた。もっとも、Windowsの話は抜きにして、家電メーカーの地デジ対応TVのメニュー反応速度や表示方法にはまだまだ改善の余地があるだろう。2011年の地デジ本放送開始までに各メーカーには頑張って欲しい、と思う。

・「スカパー!Netてれび」の開始


 スカイパーフェクTVの各チャンネルのコンテンツを、Vista Premium EditionのWindows Media Center向けにインターネット経由で有料配信する「スカパー!Netてれび」が、2008年9月30日から開始された。

 まずは全5チャンネルでスタートしたが、今後の参加チャンネルについては「スカパー!」が各放送事業者の理解と参加を待っているところであるということだった。

・TBS、フジテレビがVista用サイドバーガジェットの提供を開始

 地デジ対応Vista搭載PC向けに、TBSとフジテレビはサイドバーガジェットの提供を開始した。

 TBSは自社の通販番組の商品を紹介するショッピングガジェットを提供する。
 これは、クリックしたときにショッピングページにジャンプするのだが、通販コーナーが放送中ならば番組ウインドウが表示される。


 フジテレビは番組表のガジェットを提供する。
 これはフジテレビの番組表が見れるのだが、番組予約をしておけば、時間が来たときに番組ウインドウが表示される。

 私見だが、ネットとテレビの融合に向け、最初にサービスを開始したのがTBSとフジテレビであるというのは印象的だ。やはりテレビとネットの融合に対する危機感が他のTV局とは違うのか、という印象を受けた。
 なお、今後もTV局各社からTVとインターネットが相互に連携するようなサービスが提供される予定であると言うことだ。

シェアリングメモリー

 写真を中心としてVista, Live, Mobileを連携させた例として「シェアリングメモリーズ」が紹介された。

 Windows Mobile搭載の携帯電話"HTC Touch Diamond"から写真を撮影する。


 これを5GBの無料オンラインストレージ"Windows Live SkyDrive"にアップする。


 撮影したばかりの写真を、ネットで繋がったPCやデジタルフォトフレームですぐに見ることが可能だ。

 また、無料のソフト"Windows Liveフォトギャラリー"を使うと、タグ付けして写真を整理したり、赤目補正などの画像処理を行なうことが可能だ。

Liveメッセンジャーの新機能

 マイクロソフトは現在全てのユーザーのメッセンジャーを順次アップデート中であり、あと2〜3週間のうちに完了するそうだ。
 今回のアップデートでは高速化をはかるといった内部のブラッシュアップの他に、新機能が追加されている。

  • Webメッセンジャーの復活
    • これにより、メッセンジャーを使うことができない環境でもブラウザ上からメッセできる
  • 携帯電話のメールと連携
    • 携帯電話のメールを介して、それと意識することなくリアルタイムにPCとLiveメッセンジャーができる。
    • PCからLiveメッセンジャーでメッセージを送ると、それがメールになって携帯電話に届く。そのメールに返事をすると、Liveメッセンジャー上でメッセージとして読むことが出来る。




  • ニコニコメッセ
    • Liveメッセンジャーの横にニコニコ動画の画面が表示され、チャット中のメンバーがこれを共有して見ることが出来る。このとき、ニコニコ会員でない人でも動画を共有することができる。

 

マイクロソフトサーフェス

 CEATEC初日の基調講演では、日本では初のお目見えとなる"Microsoft Surface"のデモが行なわれた。次世代ウインドウズを模索するテクノロジーデモであり、現在市販化は未定であるということだ。

 30インチのマルチタッチスクリーンを備えた、座卓的な低いテーブル状のマシンが登場した。


 スクリーンセーバーのデモ。
 池のような画面の上で手をすべらせると、手の動きにあわせて波が起こる。
 やがて画面の周囲で跳ね返ってきた波とぶつかり、複雑で自然な波紋が大きく広がっていく。


 四角い紙を落とすと、その瞬間四角い波紋が広がる。


 画面中央部に細長い紙を落としておく。
 その右側で波を起こしても、紙の左側までは波が伝わっていない。


 マルチタッチを生かしたインターフェースのオーディオプレイヤー


 マルチタッチを生かしたイメージビューアー

 私見だが、今回のデモを見る限りそれぞれのソフトは単体で起動し、現状ではオーディオプレイヤーとイメージビューアーを同時に起動することは出来ないようだ。
 モーターショーのコンセプトカーのように、かっこいいんだけど市販されることはない的なもどかしさを感じてしまう。ただ、こういう技術的なトライがやがて新しいウインドウズに生かされるのは間違いないので、今後の進化に期待したい。

終わりに

 放送業界とネット・PCの壁を壊し、新しい地デジ対応PCが生まれた。携帯電話とPCの壁が崩れることで、シェアリングメモリーズと呼ばれる写真の共有機能が生まれたり、メッセンジャーと携帯メールの連携が生まれた。ニコニコ動画とLiveメッセンジャーの壁を崩す行為は、将来的に新たなコミュニティを生み出すかもしれない。Microsoft Surfaceは、大画面のマルチタッチパネルとPCを結びつけることで、どんな可能性がひらけるかの実験であるだろう。
 壁が壊れていくことで、新しい可能性がひらけていく。


 私見だが、Liveメッセンジャーニコニコ動画が繋がったり、あるいはメッセンジャーiモードメールと繋がったりと、「必ずしもWindowsに全てを囲い込もうとしているわけではない」という部分に、マイクロソフトの「本気で壁を壊そう」という意志を感じ取った次第である。