ーOOO-ぐっちぐっち

 いきつけの接骨院で院長先生にグイグイ揉まれながら、ダラダラと会話。
「こないだのクリスマスはたいへんでしたよ」
「はあ」
「いやあ、ヨメがブランド好きで」
「あー」
「グッチのバッグをせがまれて、大変でしたよ」
「はー。」
「ええ、大変でしたねぇ」
「…あのー、グッチって、どこがどういうふうに良いんですか?」
「んー、そのー、やっぱ、デザインですかねー」
「あー。デザインが、ですかー」
「ええ、デザインですね」


 別にクリスマスにヨメが欲しがるモンをプレゼントしたからって、ヨメに喜ばれるわけなのだし、何も「大変」ってことはないだろうと思う。
 自分が途方もなくビンボーしているのにヨメに高級バックをせがまれて、クレジットカード地獄で食うや食わずやの極限サバイバル生活に陥っちゃいました、とか言うんならともかく。でも身なりもパリっとしている立派な接骨院の院長先生なのだから、そーいうこともないであろー。
 んだから、上にあげたような話というのは
「俺はクリスマスにヨメにグッチのバックを買ってやりましたよ! はっはっはっ」
って話にしか聞こえないので、「はあ」「はあ」と返事をするしかないワタクシなのであった。


 かといってワタクシは高級ブランドに興味がなかったり、「あんなの高いだけじゃんか」などと思ったりするヒトではないのだった。
 きちんとした品質のモノは、やはり高価になり、そこには価値があるだろうと思う。
 たとえばそれは、ルイヴィトン。
 旅行カバン屋からはじまり、水に浮く丈夫なトランクを作り名をはせる。今あるバッグの取手の部分の縫い返しや切端の部分の細工の細かさを見よ。
 アレは丈夫で作りの良いバッグなのだから、お金を出す価値はあると思う。
 エルメスは馬具工房だったが、その技術を生かしてバッグなどの革製品を作り始めた。
 カルティエは宝石商だった。
 名の知れた高級ブランドには、ヒストリーがある。


 んで、だ。
 グッチってーのは、名前は聞いたことがあるけれどよく知らないのだった。
 そこで「グッチって、どこがどういうふうに良いんですか?」と尋ねたわけだ。
 そしたら「んー、そのー、やっぱ、デザインですかねー」というお答えだ。
「デザインが好きです!」っていわれちゃうと、有無を言わさない感じがある。作りが良いとか品質が良いとかそーいうんじゃなくって、デザインか。
 グッチは品質じゃなくてデザインで勝負しているブランドなんだろうか?
 気になったので調べてみた。

 グッチはブランドの元祖と呼ばれる。


 (グッチの創業者グッチョ・グッチがロンドンで)学んだことは、「原価は何も意味を持たない。むしろ商品の値段が高ければ高いほどそれを所有する事の価値も高くなる」ということである。この経験は後のブランドビジネスに大いに活かされる事となる。


 グッチョには非常に多くの逸話が残されているが、有名なものに、イタリア訪問中のエリザベス2世が同店を訪問した時、女王付の侍従が彼に「何か陛下にプレゼントを」と進言(というか催促)したので、鞄を女王に進呈したが、女王一行が去った後、報道陣がまだいるにもかかわらず「金も払わん乞食はもう来るな」と発言をした、というものがある。

グッチ - Wikipedia


 ああ、グッチョ、すごい男だ。
 そうだ、原価だの、品質だの、デザインだの、そんなものはどうだって良いのだ。
 とにかく高ければ、なんだって高級に見えちゃうのだ。
 それこそが、グッチのブランド戦略なのだ。


 みんなも高級なグッチのバッグを買うとよい。
 どんどん買って幸せになるがよい。