ーOOO-おとりさま

「今朝、新聞を読もうとしたら、火事のニュースばっかりでさぁ」
「あー、最近多いですよね、火事」
「ここんとこ雨も降ってないですもんね」
「空気が乾燥してるからなぁ」
「去年の暮れから10日以上連続して乾燥注意報が出てるみたいですよ」
「うーん、これはアレだナ、ホラ、『三の酉まである年は火事が多い』っていう、アレだョ」
「今年はたしかに三の酉までありましたもんね」
「だから火事が多い…って、そんなモンですかぁ?」
「いや、オレも理由はわかんねぇけど、昔からいわれてる事には、何かあんだョ」
「たしかに、なんだかわかんないけど、そういうことってありますよね」
「ところで酉の市って、なんなんですかね?」
「さぁなぁ…。よく『おとりさま』とかって言うよナ」
「おとりさまって名前の神様か何かがいるんですかね?」
「何の神様なんですかね?」
「よくワカんねぇなァ…。熊手を買いに行ったり、商売繁盛ってーのはわかるんだけどナ」
「んで、そのおとりさまが、三の酉まであるとどうして火事が多いんですかね?」
「んー…。コレはあれだな、おとりさまが火をつけて回るんだな」
「あー! 神様が放火してまわるんだ!?」
「神様のくせに、悪いやっちゃなー!」
「いや、そらぁわかんねぇヨ? 『火事とけんかは江戸の華って言うから、みんなに喜んでもらおう』ってーんで、ちょっとした親切のつもりで火をつけて回ってんのかもしんねぇヨ?」