ーOOO-国宝 阿修羅展

 先日は、上野の東京国立博物館で開かれている「国宝 阿修羅展」というのを見てきたですよ。

 
 阿修羅像に興味はあったんだけど、ワタシはまったくのシロート。
 会場内を何周でも出来ると言うことだったので、とりあえずスタスタッと場内をひとまわり。
 入り口付近の和同開珎とか曲玉とかに人だかりが出来てたけど、ワタシはスルー。小物はいいから、とりあえず仏像さんを拝んでおきたい。


 んで、あれこれの仏像たちを拝見です。
 …ぶっちゃけ、結構ボロかったですな。
 色が塗ってあるはずなんだけど、なんだか薄くなっちゃってる仏像。金メッキが落ちて、まだらに黒ずんでる仏像。
 こういうの、なんでキチンと修復しないのかなぁ? 不思議に思った。


 肝心の阿修羅さんは、それはもう見事だった。コレは乾漆八部衆立像という8体組の仏像の中の1体なのだが、8体の中でコレだけが美少年なのだ。
 そんでもって阿修羅像は大人気。ぐるりぐるりと人の輪が出来ていて、なかなか近づけない。会場をもう一周してから改めて拝ませてもらおうと思い、その場を立ち去った。


 その先には、70センチほどの小さな仏像が10体ほど飾ってあった。それらはみな、手首が欠けていた。スパーンと切り落としたような形。
 なぜこうなっているのかが気になって、会場の係員さんに尋ねてみました。
「あの、これらの仏像は、手首より先の部分が切り落としたようになっているんですけど、この部分が現在修理中だと言うことですか?」
「いえいえ、そうではありません。この仏像は、何度かあった興福寺の火災で、手首より先の部分が焼失してしまったのだ、とされています。興福寺は何度も焼き討ちにあっていまして、10回ほど火災にあったとされています」
「とすると、火災のたびにお坊さんたちが必死で消火したり、仏像を持って逃げたり、そういうことですね」
「消防車があるわけでなく、おそらく水もふんだんには使えなかったでしょうから、あの大きな仏像を持って逃げたんでしょうね。お坊さんたち、大変だったでしょうね。焼き討ちだから、周りに敵の兵士がいっぱいいたんじゃないでしょうか。そんな中で必死で仏像を守ったんですね」
 そういうことなのだ。
 あのボロさは、火災のたびに仏像が傷ついて出来たモノだったのだ。


 そんなことを考えながら、会場をもう一周。
 この仏像も、手首がもげている。やっぱりこれも焼き討ちで焼けたんだろうか?
 あんな大きい仏像、どうやって持って逃げたんだろう?
 仏像のキズの一つ一つが、焼け出されたときについた生々しいキズに見えてくる。そこに歴史の息づかいを、人間くささを感じる。
 キズが雄弁に歴史を物語っているから、これらの仏像は安易に修理されてなかったんじゃないか、と気がつく。


 そして、キズひとつない阿修羅像の美しさに打たれる。
 この像は、みんなが真っ先に持って逃げたんじゃないだろうか。
 守り抜かれてきた最も大事な仏像。これはきっとそういうことなのだ。


 展覧会の仏像のボロさに、そして、阿修羅像のキズのない美しさに、歴史の重みを感じとった。