ーOOO- It was such one day

 夜もふけて、帰宅途中。
 人通りの少ない道路の真ん中に、黒い小さな塊があった。
 猫だった。
 ぴくりとも動かなかった。
 まわりに何かが飛び散っていた。
 人通りは少ないが、そこそこ車が通る。手前でクルマが急ブレーキを踏んだり、大きく避けて通ろうとして対向車と接触しそうになったり、そのままにしておいては危険だ。
 また踏んづけられても可愛そうだ。私は自転車を止めて、そいつをどこかに避けてやることにした。


 冷たい夜の闇に溶けたような、黒い塊。
 近寄って、気の毒で、でもなんだか気持ち悪くて、直視出来なくて。
 目の前に立って見れば、そいつは白くて、赤かった。
 おそるおそる、でも意を決して。
 いざ持ち上げてみると、まだ柔らかくて、暖かった。
 ぴくりとも動かなかった。
 そーっと持ち上げて、道ばたの雑木林の茂みに、ドサリと置いた。
 それ以上のこと…うーん、何が出来る?
 ワタシは帰った。


 家に帰ると、いつものようにネコの杏ちゃんさんがニャアニャアとお出迎えしてくれた、
 電気の消えた真っ暗な部屋の中で、冷たい夜の闇に溶けたような黒い塊が、動いていた。
 パチリと電気をつければ、部屋は明るくなった。
 寄ってきた杏ちゃんを持ち上げると、柔らかくて、暖かった。
 まずはアタマをいっぱいなでてやった。
 杏ちゃんは何故なでられているのかわかって無さそうだったが、ゴロゴロと楽しそうにノドを鳴らした。
 自分だって、いまどうして杏ちゃんを撫でているのか、よくわからない。
 ただ、いつもよりたくさん撫で続けた。
 杏ちゃんはガブガブと私の手をかじり、ゴロゴロとノドを鳴らし続けた。