おしりの一万円 ─◯◯◯-

ゴールデンウイーク最後の日、
仕事が忙しくてヒイヒイ言っていたら
焼き肉食いに行こうぜ、とのお誘いが。
その夜、テキトーに待ち合わせて
男三人で車に乗ってダラダラと焼肉屋を目指す。

ゴールデンウイークだからかどうかはわからないが、
道は混んでいて、車はゆっくりと進んで行った。
信号待ちの渋滞の列も長い。

そのとき、運転していた友人が、
「おい見ろ、あのオネーチャン!」
と叫んだ。
横断歩道の信号待ちをしているイカしたオネーサン。
見れば、ジーパンのおしりのポケットに何か入ってる。
ってか、あれは…
お札だ!
それも一万円札だ!

にわかには信じられず、
ホントに一万円札なのか、千円じゃないのか、
それとも服の柄とかじゃないのか、といったような
あらゆる可能性を検討するために
イカしたオネーサンのおしりを
車の中から「じいーっ」と見つめる男三人。
しかしどうもそれはやはり
無造作につっこんだ一万円札であるらしい、という結論となった。

お金をお金とも思わない感じというか
無造作な感じが
すごく男らしいって言うか
女っぷりがすごい感じがして
「何あれは? パチスロかなんかでバカ勝ちしたのかねぇ?」
とかいう話で我々は盛り上がり、
信号は青になり、
ゆっくりと発車してイカしたオネーサンを追い抜いて行く。

そしてワタシは追い抜きざまに

「車の中からオネーサンのおしりの一万円に気が付いた友人は
 前方不注意な注意力のないドライバーなのだろうか、
 あるいは細かなことにも目を配る
 注意力のあるドライバーといえるのだろうか」

とかなんとか思った。