天使の分け前 ─◯◯◯-

土曜日の夜は上野恩賜公園で夜桜見物。
とはいえ、私が夜から参加しただけで、
幹事のひろさんは寒い一日だったのに、
朝の9時から場所取りしてたとか。
幹事&参加者の皆さん、乙です。

上野には詳しくないワタクシ。
新しくなった上野の駅ビルには
ハードロックカフェが入ってたのでびっくりしたり、
別な場所の別なビルには
去年の夏に私が友達と飲んだ居酒屋があったはずなのに
店名が変わっちゃってて「早っ!」とか思った。

そんなこんなで私は上野で花見をしたことはなかったのだけど、
花見の名所だけあって、なかなか素晴らしかった。
桜並木に沿って、赤くちょうちんが灯っている。
ライトアップされている神社が夜桜の中に浮かび上がる。

そして人込みもすごかった。
いったんトイレに行くとどこに戻っていいのか分からなくなるほど。

公園のぼんぼりが消灯する夜8時ごろ、
TBSのクルーが花見の取材をしていた。
仮設ゴミ集積所のゴミの山の前に立って、
「ご覧ください、このゴミ、ゴミ、ゴミの山。
 一体だれが掃除をするんでしょうか?」
とか言ってた。

しかし、そのカメラに隠れるようにしていた男がいた。
仙人ヒゲを生やした公園のヌシだ。

カメラが去ると
仙人様は元のように仮設ゴミ集積所の横に陣取り、
だれかがゴミ集積場にゴミを捨てようとすると
「アキ缶ない? 缶ない?」
と、その場でゴミを受け取る。
アルミ缶はつぶして
仙人が持参したゴミ袋の中にボッシュート
そしてそうでないゴミは燃えるゴミ、燃えないゴミと
ぽいぽい分別していた。

空き瓶に残ったウイスキー、焼酎などは
おそらく仙人様の仙人ビンにミックスされて
仙人様の甘露となるであろう。
持ち帰られなかったブルーシートは
仙人様の敷物や住まいの壁へと変わるであろう。

あまねくゴミはゴミではなく
すべて公園のヌシたる仙人様への貢ぎ物へと姿を変えるのだ。
そして仙人様の貢ぎ物にならなかったもの、
いわばゴミとしか言いようがないものは
背後の簡易ゴミ集積所に
仙人様自らの手によって燃えるゴミ、燃えないゴミと分別される。
そういったゴミ分別行為の対価として
仙人様は貢ぎ物を受け取っているとも言える。
いにしえよりこれを、天使の分け前と呼ぶ。

ところで9時頃にTBSはまたやってきて
「ご覧ください、このゴミ、ゴミ、ゴミの山。
 一体だれが掃除をするんでしょうか?」
とかまた言ってた。