着信でも保留でもなく ─◯◯◯-

映画館の中で
マターリと映画をみてたら
急にカバンの中のケータイが着信して
ふだんはちっとも鳴りゃあしないクセに
こういう時に呼び出しってどーいうコトだよとか思いつつ
そーいえばオレ、今日はケータイの電源を切るのを忘れてた
ってコトに気が付いたり
しかもマナーモードがオフとかになってて
こないだ入れたばっかりの着メロが
映画館内に響き渡っちゃったりして
すごく恥ずかしい思いをして
早く電話切りやがれ誰だこのヤロウ、とか思うんだけど
全然鳴り止む気配がなくって
俺の周囲の客の目線がすげえ冷たくって
とにかく電話切れろ早く切れろ、とか祈るんだけど
まったく祈りは通じなくって
仕方ないからケータイをカバンから取り出そうとすると
カバンのフタを開けた瞬間に
着メロがいっそう大きな音で鳴り響いちゃったりして
もうとにかくなんとかしようと
カバンの中からケータイを引っつかんで取り出すと
ケータイのイルミネーションがビカビカ光りまくっちゃって
真っ暗な映画館内で
俺の席だけ光がキラキラピカピカしちゃって
ウルセエだけならまだしも、まぶしくなっちゃって
周囲の客にすげえ白い目で見られるっつーか
もはや視線には殺気さえ感じられて
チクショウ、誰だ俺に電話をかけてきたのは、と
激しくムカつきながらケータイを見たら
親父からの電話で
と、その瞬間電話が切れて、
だらだらベルを鳴らしっぱなしにする奴だなあと思ってたけど
なんだよおとーさんなのかよ
おとーさんはケータイ持ってないから
ケータイのマナーみたいなのを知らなくて困るよ
電車に乗ってて電話に出られないこともあるから
鳴らしっぱなしにされても困るんだよ、って
むかし言っといたはずなのになぁ
とか思いながらケータイをカバンにしまって
すっかり映画は先に進んでしまっていて
一体ストーリーの中では何が起こっていたのかを推理しながら
ゆっくりと脳みそを映画鑑賞モードに切り替えていたら
またケータイが鳴って
うひゃ、そーいえばさっきケータイしまうときに
電源切っとけばよかったんじゃんオレ
って感じで振り出しに戻ったりするコトがある。


携帯電話の呼び出し中に
受話→即切断、とするのはひどく冷たい感じがする。
それから、そもそも電話に出る気がないので
保留にさえできない時もある。

受話でも保留でもなく
着信中に着信音やバイブを切る機能のボタンが欲しい。
「おとなしくしてろボタン」というか。

まあ留守電をONにしとけばいいんだけどサ。