名物にうまい物なし ─◯◯◯-

いつもゆかいな弊社は
まあまあそこそこの和菓子屋なので
かなり以前、
あるテーマパークから
その立ち上げに際し
「当テーマパークにからんだ商品を出さないか」
というオファーがあった。

某テーマパークのキャラクター的なものを
商品自体やパッケージに盛りこんだような
「○○まんじゅう」
みたいなものを作らないか?
というお話。

これはアツい。当たればデカい。
弊社社長は鼻息が荒くなった。

商品企画面での困難は、
弊社は比較的お土産物に重心を置いていないという点。
どういうことかというと
弊社の商品は保存料、添加物を使っていない。
その日に作った商品を
その日に食べてほしいという感じ。

だから弊社の商品は日持ちしない。

お土産物にするには
多少日持ちするような商品が必要だろう。
店頭に置いておいても何日か持ち、
かつお客様が買って帰ってからも何日も持つような。
ぶっちゃけ
賞味期限が一カ月とか二カ月とか
そういう商品が必要だろう。

弊社はそういう方面の技術を磨いていなかった。

それでもどのような商品を企画するか
話を進めるうちに
テーマパーク側から出された条件が
「売上の60パーセントは
 当テーマパークがロイヤリティーとして取る」
というものだった。
さすがの社長も絶句した。

つまり、千円のまんじゅうを売る場合
六百円は某テーマパークが取り、
弊社は残り四百円の中でまんじゅうやパッケージの原価、
そして利益を出さなければならない。

「食べ物の場合はそれなりに原価は必要です。
 ポスターやペナント、ピンバッジではないのだし
 それはいくらなんでも…」
と、弊社社長は交渉。
最終的に某テーマパークは「55パーセント」を提示して来た。

結局その話に弊社は乗らなかった。
というか、乗れなかった。

今も弊社はあいかわらずちいさな和菓子屋で
某テーマパークはもうとっくに潰れています。