ーOOO-日本優勝、その瞬間…

 こないだのWBCの決勝戦の日というのは春分の日であり、でもってそれはお彼岸の中日であり、だもんで本業和菓子屋さんなワタクシは、その日は朝からずっとおはぎをつくっていた。
 弊社の和菓子の味の秘密は、ただただ愚直に手作りすることと、添加物・保存料を使わず、冷凍保存などの作り置きをしないという点にある。っつーことでワレワレは朝の6時半からずっとひたすらおはぎを包んでいた。
 手は動かしつつも、耳はラジオから流れるWBC情報へ。ラジオから流れる直前情報を聴きながらソワソワ。試合がはじまれば耳をダンボにして一喜一憂。だけど基本的には真剣に仕事をしているので、聴いてるようで聴いちゃいないので、今何がどうなっているのかはイマイチつかめない。そんなもんだ。
 七回あたりは午後二時過ぎだったか? このころになるとワレワレの疲労はピークに達し、ぐだぐだになっていた。指が動かぬ。試合展開に一喜一憂。
 九回。試合展開が気になり過ぎ。勝負が決まってくれなければ仕事にならない。
 そして感動の優勝決定!
 優勝が決まれば決まったで、勝利インタビューが聴きたくなったりして、やっぱり仕事にならないのだった。


 試合が決まった後もワレワレの仕事は続く。そしてラジオの中継は終わったが、そのあとの番組もWBC日本優勝の話題が続く。ワレワレは黙々とおはぎを包み続けながら、ラジオを聴く。
「いやあ、すごかったですねぇWBC日本優勝! …ということで、今日の番組のテーマはこちら、『WBC日本優勝、その瞬間あなたはどこで何をしていましたか?』 いつもの番組のあて先でFAX・メールをお待ちしております。」
 おっ、コレはいいな。「ワタシは和菓子屋なので、おはぎを包みながらWBCを聴いていました〜」なんて書いて送ったら採用されそうだなぁ。DJに「そうですねぇ、今日は彼岸の中日なんですよねぇ」なんて言われて、特製大吉ステッカーとかサプライズバッジとかがもらえそうだなぁ、とか思った。
 しかし殺伐と業務は進行中で、メールを打つスキがなかった。
 あとメールが採用されちゃったら、会社のみんなが聴いてるのでオイラがメールを送ったことがバレバレになりそうなので恥ずかしいと思った。けどそんな心配をするのは自意識過剰ですよ、と今思った。