ーOOO-社長のイヌ
弊社のシャチョーはイヌを飼っている。
黒の雑種なのだけど、まつげの部分だけがちょっと白い感じ。白まゆげ犬だ。
シャチョーはイヌを可愛がりはしたいのだが、面倒くさいことはキライなので、散歩はおおむねお手伝いさんの仕事だったりする。
で、イヌとの触れ合いは、もっぱら可愛がることだけ一辺倒で。
そんなふうに猫っかわいがりしていたので、ワンちゃんはすっかり甘ったれたイヌになってしまった。
会社のみんなが社員食堂、というかお勝手で、お昼ごはんを食べていると、ひょいっとワンちゃんは顔を出す。
匂いに釣られてテーブルの上に鼻をのぞかせる。そして「くれくれ」と、おねだりのポーズ。それで誰も何もあげなかったりすると、「クゥゥーン、ヒャウーン、ヒューン」と、世にも悲しそうな声で鳴くのだ。
「静かにしてなさい」「おとなしくしなさい」とシャチョーが言っても聞かない。
でも、お手伝いさんが津軽弁で
「これっ、シャンとしなって」
と言うと、シャンとするのだった。
「あんまり聞きわけがねぇと、山ッコさ捨てでくるよ?」
と言うと、おとなしくしてスゴスゴ引っ込んでいくのだった。
「うーん、あの犬は、津軽弁がわかるのかねぇ? ああ見えて実はあの犬は津軽出身?」
「いや、違うと思いますよ。ホラ、犬は家の中の人間関係の上下を見るって言うじゃないですか? だからあの犬は、『ウチの会社の中で一番エラいのは、あのお手伝いさんだ』と思ってるんじゃないですかねぇ?」
「うん、確かにね。散歩に連れてってもらったり、エサをもらったりするからね。お手伝いさんの機嫌を損なうと、エサがもらえないんじゃないかとか思ってるんだろうね」
しかし実際、我々もお手伝いさんのご機嫌を損ねれば、おかずが一品少なくなったりしかねないワケで。
弊社で一番エラいヒトは社長ではなく、お手伝いさんではないだろうか… という意見で我々は一致した。