ーOOO-陽気なギャングにそそのかされる
んで、「明日の記憶」を見た日に、実はもう一本映画を見てきましたです。
「陽気なギャングが地球を回す」という作品です。
どんな映画かというと、4人の男女がギャングを結成し、それぞれの特殊能力を生かして銀行強盗する、というお話。
たとえば強盗に入って、従業員や銀行員をロビーのすみに集める。そこで口のうまい男が、人質たちに話をはじめる。うろおぼえだけど、こんな感じ。
「みなさんのお時間を、ほんの5分だけお借りします。なあに、宇宙が始まってからの時間に比べれば、5分なんてほんの一瞬。みなさんにそんなにお手間は取らせません。
さてみなさん、こうして私達が出会ったのも何かの偶然。みなさん達には、なぜ私達がこんなギャング団を結成したのかのお話をしたいと思います…」
立て板に水。するすると良い調子で話は続く。
あまりにも口がうまいから、ついつい人質たちはその話に聞き惚れる。その間に、他の仲間たちはそれぞれの特殊能力を生かして着々と金を奪って行く…。そんなお話。
ところでワタシは、この日の映画館のタイムテーブルをにらんで、「明日の…」を見てから「陽気な…」が見られるように、座席指定でチケットを買っておいたのでした。
しかし、コレは失敗だったかな。「明日の…」がかなり印象深かったので、こちらの映画を見てもうまく気持ちが切り替わらなかったんだよなー。ま、こういうこともあるさ。
さてさて、話は映画のエンドロールが流れはじめた時のこと。
口のうまい男が、とうとうとエンドロールで話し始める。後口上ってヤツだね。
「みなさん、この映画に最後まで付き合っていただいてありがとう。映画が終わるまで、ほんのしばしの間、私の話にお付き合いいただきたい。なあに、宇宙が始まってからの時間に比べればほんの一瞬。みなさんにお手間は取らせません…」
なかなかの名調子。
「さて、こうしている間にも、映画のエンドロールが流れ始めました。
映画のエンドロールの時間をいかに過ごすか?
感動の涙をそっとぬぐう?
帰りの支度をして、ひと足先に劇場を後にする?
諸説万片、コレが正しいという正解はないのではないでしょうか」
ほうほう。
「ではここで私はひとつ、みなさんに提案をしたい。隣に座った人に、
『これからひとつ、お茶でもどうですか?』
と言ってみるのはどうでしょう?
何を突然、と思うかもしれない。しかし人生、出会いはどこに転がっているか分からない」
ワタシは急にドキドキした。
なんでって、一人で映画を見ているワタシのすぐ隣に、これまた一人で映画をみているステキなおねーさんがいたからだったのだ。
「さあみなさん、ここで隣を向いて、目と目をあわせて見つめ合おうじゃありませんか。
なあに、長い人生に比べれば、お茶を飲むのもほんの一瞬。お手間は取らせません。
こうして隣り合って映画を見ているのも何かの運命、この映画をきっかけに二人は出会い、いつしか結婚するかもしれません。そんな話がないとは言い切れない。
この映画がそんな出会いのきっかけになれればうれしい…」
もーね、どんどん話が進んでいって、オレの背中をどんどん押すのよ!
うわっ! 横向いちゃう? お茶誘っちゃう?
もう心臓バクバク。
映画を見ていてあんなにドキドキさせられた事はなかったなー。
結局なにも言えずに帰りましたとさ。
ちゃんちゃん。