ーOOO-イヤないきもの

 ウチの後輩君がへんないきものを発見して、会社に持ってきた。
 なんでも、「バイクにかぶせておいた布を外したら、バイクのシートの上にへばりついていた」ってコトだった。
 ペットボトルの中に閉じ込められたソレは、黒くて長くてぬらぬらとしていた。ミミズの黒い奴というか、でも頭の部分がちょっとデカくて、それでいてナメクジのように腹の部分がぺとぺと張り付きそう、という感じ。
 この謎の生き物、いくら見ても正体の見当がつかない。
「何でしょねコレ。新発見ですかね?」
 バカだなぁ、そんなのどうでもいいから、この気持ち悪いヤツを早くどっかに捨ててきちゃいなさいってば… と思いつつも、ワタシもバカなので、新発見なのかどーなのかが気になってくる。
「大きく育ったら、何かに突然変異するかもですね」
「あー、エボリューションって映画に出てくるモンスターの、最初の状態がこんな感じだったよ。あっというまに大きく育って、食われちゃうんだよオマエは」
「いやー、そんなのわかんないじゃないスか! 大きくなったら恩返ししてくれるかもしんないじゃないですか?」


 んでもって、各種検討の末、おそらくコレはヒルの一種であろう… と推察した。
「あれ、ヒルってもっとちっちゃくって、プクッとしてないっすか?」
「まあ、種類もいろいろあるだろうし、血を吸ってるから膨らんでるって可能性もあるよな。知りたければ、身体に張り付けて待ってればいいよ。血を吸ったらヒル、吸わなかったら違う」
「えー…、試したくないなー…」


 で、ヒルについてネットであれこれ調べてみたら、まあ出るわ出るわ、気色悪い画像の数々。辞書の記述を読んでいるだけでも、何だか鳥肌が立ってくる。
 んで調べた結果、ヒルと言ってもかなり種類があって、大まかに言うと血を吸うものと肉食のものに分かれることがわかった。
 そのページを後輩に見せたら、後輩はすみずみまで読んで
「うっわ、『キバヒルと呼ばれる種類のヒルは4〜5千円で取引される』って書いてありますよ! オレのコレがキバヒルだったら、大もうけじゃないッスか!」
 で、キバヒルについて検索したんだけど、画像が結局見つからなかった。個人的には気色悪い画像を見なくて済んだので助かったのだが、後輩君は気になって仕方が無いらしい。


 そこで実験をすることにした。
 ペットボトルの中に、へんないきものと一緒にミミズを入れてみることにした。
 血を吸うか、肉を食べるか… キバを見せればキバヒルだ。
 どちらでも無ければ、そもそもヒルではないということになる。
 こうして実験は始まった。


 次の日の朝。
 へんないきものは、いなくなっていた。
 どうやらミミズに食われたらしい。