ーOOO-ポスター

 こないだの休日。
 玄関のチャイムが鳴ったので「はぁい」とドアを開けたら、お向かいのオバさんが立っていた。
 このオバさんは良くあいさつをしてくれるヒトで、面倒見の良さそうな、見方を変えるとややおせっかいな感じのオバさんだったのだが。
 で、このオバさんが「今日はお願い事があるんだけど…」と言う。
 はあ。なんでしょか?
「実はね、選挙のポスターを貼らせてほしいんですけど…」
 はいー?
「いや、あの、昔ここに住んでいた方にもお願いしていたんですよ。ここのお宅は日当たりもよくて、角に面しているから、通りからとてもよく目立つでしょ? それで、以前こちらに住んでいた方にもお願いして、ずっとポスターを貼らせてもらってたんだけど…」
 目立つったって、ねー。
「それで、私の応援するK党のセンセイが、こんど立候補することになったんですよ。めいっぱい応援したいから自分の家に貼ってもいいんだけれど、ワタシ、民生委員だから、選挙とか政党とかそういうのは、立場上いろいろと…ねっ」
 あー、オバさん、民生委員だったんスか。
 そしてK党ね…。いいけどさ。


 玄関先で話をするのもナニなので、外に出た。
 そして通りに面したフェンスに手をおいて、ワタシはこう言った。
「このフェンスは、ウチが引っ越してきてから作ったものなんですけど。昔ここに住んでいた方にポスターをお願いしていた時は、どこにどういうふうにポスターを貼っていたんですか?」
「あ、あの、それは。あのー、…昔は玄関の横に物置があって、ソコに貼らせていただいていたんですけどー…」
「ふーん、物置、ねぇ…」
 ウチの裏庭に目をやると、前の住人が置いていった物置がソコにあった。
 ポスターの件は丁寧にお断りした。


 ウソついてまで選挙のポスターを貼りたいって言うのが、なんかねー。
 それから、一回頼まれちゃったら、ずーっとあれこれ貼り続けるハメになるんだろーなぁ、というのもウザい。んでその延長で「ずっとポスターを貼っているんだから、これからはK党の応援をしてくれませんか?」的なことを言われちゃうとイヤだ。
 今までは向かいのオバさんは面倒見がいいヒトなのかなーと思ってたんだけど。K党ってことは、S学会の学会員かー? K党。S学会。民生委員。ヤなトライアングルだな。