ーOOO-おとなりのネコ
会社の路地では、よくネコを見かける。
つい手を止めて、そちらを見つめてニヤニヤしてしまうワタクシ。
屋根の上から、おくびょうな感じでジッとこっちを見つめる三毛猫さん。
いつもの顔なじみなので「どうもこんちは」とワタシは頭を下げる。
「ハテ? 誰かなぁ?」と、不思議そうな感じでこちらを見つめる三毛猫さん。
ワタシはじわりじわりと間合いを詰めて、ネコさんの顔のまえに指を差し出す。
「???」とネコは指のニオイをかいで、ひんやりした鼻の頭をこすりつけたり、ちょっとペロペロなめたりする。
それだけ。
エサをあげたりしないし、ナデナデしたりはしない。したいけどな。
ホントの意味でネコを可愛がっているとは言えないんだろうけど「これくらいの距離感でイイや」とワタシは思っている。
この三毛猫さんは臆病でいて、人なつっこいネコだ。
特徴的なのは、その泣き声。
「ニャー」「ナーオ」ではなくて、声変わりをしなかったのか何なのか、子ネコのように甲高く「ミー」「ニー」と鳴く。
それも、長く鳴けないらしく、かすれたように短く「ミィ」「ニィ」と鳴くことが多い。
その鳴き声は、どことなく悲しい感じ。何度も「ミィ…」「ニィ…」と鳴かれると気になってしまい、なんだか仕事が手につかないのだった。
しかし元気がないとかイジメられているとかそういうわけじゃなくて、ウチの会社のオバサン達に愛想を振りまいているだけなので、心配するには及ばないのだった。
気になるのはウチの会社のワンちゃん。
塀の上や屋根の上にネコを見つけると、もんのすごい勢いで「ワンワンワン!」と吠えまくる。
その剣幕に驚いたのか、あるいは恐怖のためか、ネコは「ビクッ!」として金縛りにあったように動けなくなってしまう。
金縛りにあったネコに「ワンワンワンワンッ!!!」とますます吠えつくワンちゃん。
見かねてお手伝いさんが「こーら、あんまり吠えるモンでネェのョ…」とワンちゃんを連れ去るまで吠え続けるのだった。
ウチの会社のワンちゃんはネコが嫌いなのかなぁ、どうしてそんなに嫌いなのかなぁ…と思った。
んが。
ウチの後輩君に言わせると、ソレは違うらしい。
「こないだ、たまたま見てたんスよ。
したら、ウチのイヌがネコを見つけたら、最初は黙ってじーっと見てるんスよ。
ネコを見ながら、ぶんぶんウレシそうにシッポを振ってるんスよ。
んで、ずーっと見ててもネコがこっちを振り向いてくれないと、ワンワン吠えるんスよ。しっぽをぶんぶん振りながら。
多分アレは、ネコに興味があるか、ネコに遊んで欲しいと思っているか、どっちかじゃないかと思うんスよねぇ…」
あー。そうか。
お前、ネコと友達になりたいのか?
種族を超えた報われぬ愛情。この物語の行方は、果たして一体…
(続かない)