ーOOO-MEGATECH BODY NIGHT

 アニメとテクノの融合の話の周辺を読んでいたら、流れはゲームとテクノの融合の話になって、PS版「攻殻機動隊」の名前が出てきた。
 ゲームとテクノの話だとやっぱゼビウスとかペンゴあたりから語んないとダメでしょ、とか思いつつも、
もうどうしようもなくPS版の攻殻が懐かしくてたまらない。


 士郎正宗による原作コミックが89年。押井守による映画が公開されたのが95年。そしてこのPS版のゲームが発売されたのが97年の夏のことだった。
 映画の攻殻が押井ワールドに染まった仕上がりだったのに対し、このPS版のムービー部分は北久保弘幸が監督を務め、原作に寄せた形の仕上がりとなった。
 PS版攻殻のサウンドトラックディレクション石野卓球が担当、通常では考えられない世界各国のトップ・アーティストがレーベルの壁を越え、曲を提供した。
 
 そして、このゲームの発売を記念したイベントが行なわれた。
 それが「攻殻機動隊 MEGATECH BODY NIGHT」だ。
 ワタシはテクノは聞かないわけではなかったが、クラブ系のイベントには一度も行ったことがなかった。だけど、テクノのイベントじゃなくてゲームのイベントだと思って、気楽に足を運ぶことが出来た。
 7月18日の夜10時から始まったこのイベントで、一番盛り上がったのはメインのDJではなくて、11時台に回していたDJの時で、それも曲が盛り上がったのではなくて、VJ画面いっぱいにプレイステーションの起動ロゴが映ったときだった、と記憶している。だからあの夜、会場を埋めつくしていた多くのヒトはテクノ系・クラブ系のヒトではなくて、自分みたいなゲーマー・アニオタだったのではないか、と思っている。
 踊り慣れていないのであっという間にヘロヘロになった。休憩室では攻殻機動隊の英語吹き替え版を字幕付きで上映していたので、ソレをずっと見ていた。
 翌19日。朝日が昇るころに恵比寿ガーデンプレイスを後にして、有楽町に向かった。この日は「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に」の公開日だったからだ。
 まだ6時前だというのに、劇場の周りをグルッと人が囲んでいる。映画館は真夜中からすでに開場し、上映中だった。「こんなに朝早くから並んでも一番乗りで映画を見られるわけではないんだ」という残念さを感じつつ、「朝十時まで並ばないで済むので助かった」とも思った。
 エヴァをたしか朝8時くらいの回で見たと思う。11時ごろにフラフラで劇場を後にした。
 そしてこの一週間前が「もののけ姫」の封切り日だった。この日のためにもののけ姫を見ないでおいた。ぜんぶこの日にやっつけてしまおうと思っていたからだ。軽く腹ごしらえをしてからマリオンに向かった。もののけ姫もまた、ハンパじゃない行列ぶりだった。


 そういうわけでMEGATECH BODY NIGHTのあった夜は、攻殻機動隊エヴァもののけ姫をいっぺんにやっつけた夜だった。
 あんなに濃い日はなかった。
 もっと暑い夜がやってくるのではないかと、ゲームやアニメやテクノの未来に希望を持っていた。
 ワタシは今でもあの日のことを懐かしく思い出す。