ーOOO-なあなあオレだよオレ

 こないだ実家に帰ったら、父がすごくうれしそうな顔で「なあなあ聞いてくれよ」と言うので、なあにと言ったら
「実はさっき、オレオレ詐欺の電話があった」
と言うのでびっくりした。

「いやあ、さっき電話をとったら
『もしもし、オレだけど…』
って言うから、「どなたですか」って聞き返したら
『オレだよオレ』
って言うから、ハハアンこれはオレオレ詐欺のたぐいかなぁと思って、どこのどなたですかって聞きかえしたら
『あんたの息子の○○ちゃんだよ』
って言うから、オマエは自分のことを○○ちゃんなんて言わないから、いよいよこれはオレオレ詐欺だなぁと思って、「その○○ちゃんがどうした」って聞き返したら電話がガチャンと切れちゃったよ」

と、興奮気味かつ嬉しそうに、その体験談を話すのだった。
 今時のオレオレ詐欺としてはあまりにも手口が荒っぽいというかズサンで、それは成功するはずがないんじゃないかなぁみたいな手口とやりくちで、
「聞いてみれば声は全然違うし、なんか40過ぎのオッサンみたいな声だったよな。なんか「もうかるって聞いてはじめてオレオレ詐欺をやってみました」みたいな感じで、全然なってないよ。あんなんじゃぁ誰もダマせないよな」
と、父はワタシに向かって詐欺の手口のダメ出しをしまくるのだった。


 「とうとう自分のところに、いま流行のオレオレ詐欺の電話がかかってきた!」という興奮と、「オレオレ詐欺に自分は引っ掛からなかった!」という興奮で、父はものすごく嬉しそうだった。
 誰も騙すことの出来ないようなレベルの低いオレオレ詐欺なら、父みたいなヒトの退屈しのぎにもってこいなので、たまに電話がかかってきてもいいのかもしれないなあ、とか思った。
 でも手口が巧妙になってウチの父が騙されるとマズいので、やっぱ止めてほしいと思った。