ーＯＯＯ-バイバイセコー - あんだんごーＯＯＯ-

「自転車通勤をはじめました」
と言うと、会社のヒトが興味深げにあれこれ話しかけてくる。
　ので、会話のまとめ。

「雨対策とかはどうしてるの？」

「いや、いちおうカッパを買ったんですけど、メインは折りたたみ傘で行こうかなって」

「カサはダメだよー。知ってる？カサを差してるときは片手運転だから、道路交通法違反になっちゃうんだよ」

「えっ、マジですか？」

「ほら、ケータイかけながら車を運転するのがダメ、とおんなじ理屈だよ」

「ってコトは、カサを差しながら自転車を運転していると、『はーい、そこの自転車の運転手さん、ちょっと右に寄せて停車してくださーい』とか言われて、キップ切られちゃうんですかね？」

「だからカサなんかやめて、カッパを着るべきだって」

「いやー、でも、カッパ着ちゃうと、途中で雨が止んできたときとかにどうしようかなーって思うじゃないですか？」

「あー。雨が全く降ってないときにカッパ着てると、マヌケな感じがするかもなー」

「あと、途中で降り出したときに、どこで着替えるかとか迷うじゃないですか？なんつーか、変身場所を探し求めるスーパーマン、みたいな？」

「雨具じゃなくて、登山服だと完全防水なヤツがあったりするよな。普段着っぽいヤツを選んで買えばいいんじゃないかな」

「本気で自転車で走っているヒトたちは、ピタピタした服にヘルメットなんかかぶっちゃったりしてますよね」

「アレを着るのは恥ずかしいよね…」

「でも、『ヘルメットくらいは買った方が良いかもしれない』って自転車屋さんに言われてて。『自転車は事故ると危ないから、通勤で乗るならヘルメットは買っておいた方がいいよ』って」

「あー。なるほどねぇ…。でも普段着に、あの自転車用ヘルメットは似合わないよね？」

「ですよねぇ？かといってバイク用のフルフェイスってわけにも行かないし」

「そんなのかぶって自転車を全力でこいでたら、間違いなく通報されるって…。あ、そういえばバイクのヘルメットに見えないヘルメット、あるよ」

「え、どんなのですか？」

「アフロヘアーのカツラをかぶせたヘルメットってーのがあるよ。コレならヘルメットには見えない！」

「そんなのかぶって自転車を全力でこいでたら、小学生とかに指さして笑われますって…」

「あと、なんか自分の知らない間に『アフロ』とかあだ名がついちゃったりなんかしてな」

「そんな、『名物おじさん』みたいになっちゃうのはイヤですよ…」

「そもそもヘルメットが恥ずかしいと思っちゃう時点でダメだな。もういっそのこと、黄色いヘルメットとか、どうだ？」

「ソレ、普段着にめちゃくちゃ似合わないじゃないですか！」

「だから、普段着もコーディネートしてさ。工事現場とかの作業着とかさ、ニッカボッカを履くとかさ…」

「言われてみれば、そんなカッコで自転車に乗ってるヒト、いますよね…。あんがい普通なのかも…」

「通勤時間はどれくらいかかるの？」

「１０キロを４０分で走ったことがあったんですけど、いざやってみたら４５分とか、５０分とか」

「疲れてる日もあれば、風が強い日もあるだろうしね」

「あと、歩道の上を自転車が走ってたりすると、なかなか抜けなかったりして大変なんですよ」

「あー、おばちゃんとか？」

「そーいうのより、小学生のほうが抜かせてくれなかったりしますよね」

「なんかわかる気がする。よくわかんない意地とか自信みたいなのがあるのかな？『オレは速い！』みたいな」

「チラッ、チラッと後ろを振り返るんだけど、オレがついてきてると判るとシャカリキに漕ぎはじめて、で、ブッチちぎったと安心して、なんか急に漕ぐのをやめてまたノロノロ走るんですよ。んで振り返るとまたオレがいて、ギョッとした感じでまたあわてて漕ぎ始めて…」

「『オレについてこれるかい？』みたいな感じなのかもねぇ」

「んで道幅が広くなったところで、ごわわわぁぁっとブチ抜いて『オトナの本気を見せてやったぜぃ！』みたいなー」

「それじゃどっちが子供なんだか…」

「いや実際、オレは速いんですよ！ママチャリなんだけど、なぜか７段変速のギアがついてますから」

「じゃあさ、土手で自転車の練習だかなんだかしてるヒトがいるじゃん？あーいうのに勝てる？」

「本気で走ってるっぽいヒトたちは、案外スッと抜かせてくれるんですよ。なんだろ、抜かされ慣れてるって言うのと、あとあのヒトたちは１００Ｋｍとか距離を走るから、自分のペースを保ってるから意外に遅い感じがしますよね」

「んじゃー、ママチャリでブチ抜いた瞬間に、後ろをちらっと振り向いて『ニヤリ』とかやってみたらどーですかね？」

「抜きつ抜かれつのデットヒートですかね？あ、でもなんか、長距離を走るときはお互いわざと抜きつ抜かれつをするみたいですよね。なんか先頭のヒトの後ろでスリップストリームに入るとかいうテクニックがあって、競輪でもロードレースでも車列が出来たりしてますよね」

「自転車の選手が列を作ってるとカッコいいけど、サラリーマンが列を組んだりするとカッコ悪いな」

「あ、でも逆になんかほほえましくて良いじゃないですか？『部長！ボクがご自宅までお送りしますから、ワタシの後ろをどうぞ』とか」