ーOOO-父とパソコン
先日、実家の父がパソコンをはじめた。
で、とりあえずインターネットとかは後回しにして、パソコンに慣れてもらおうと思った。
そこで、「まったくの初心者がマウス操作を覚えるために、まずはコレがおすすめ」と評判の高い、Windows標準搭載の『ソリティア』で遊んでもらうことにした。
半月ほどたってから実家に様子を見に行ったら、父はソリティアがエラく気に入ったようで、ずーっとずーっとソリティアばっかりやっている。
「いやぁ、お父さんはパチンコも麻雀もやらないし、ムズかしい新しい機械は苦手だけどさぁ。でも、ゲームって、やってみると面白いもんだなぁ」
ずいぶんと操作に熟達していて、カードをドラッグする手つきも危なげがない。
あと、「カードの上をダブルクリックすると、カードがあるべき位置に勝手に飛んでいく」という操作も身につけていた。
うわ、オレ、そんな操作知らなかったよ。コレ、基本の操作なんですか? 父が自分一人でウラワザを発見するとは思わなかった…。侮れない…。
そんなこんなで、うれしそうにソリティアばっかりやってる父。
ずーっと、ずっと。
横で見ていて不安になるほどハマってる。
で、マウスは卒業と言うことで次のステップとしてキーボード練習ソフトを買った。
選んだソフトは「特打3」。
このソフトは、「F」と「J」の上に人差し指を置いた状態を基本として、「F」を押すときは音声で
「左手人差し指!」
とか言ってくれるのが特徴です。キチンとした位置に指を置いて、タッチタイピングを基礎から学べる。
でこのソフト、西部劇みたいな場面を舞台にして練習が進んでいくので、あまりにもゲームっぽいかなぁと心配したのですが、父はコレもいたく気に入っていました。
キーを押すと「バキューン!」と銃声が響く。
「なんだか気持ちいいねぇ」と父。
画面の中のおやっさんに「ダメじゃネェか」と言われ、なにくそっと「もう一回」を選び。
「いやあ、長い人生、いろいろなことをやってきたけれど、だけど『左手薬指を斜め下に』とか、『右手小指を上に』みたいな指の使い方はしたことがないよ。中指だけ動かそう、と思うんだけど、思ったように動かないもんだねぇ。指先を動かすことはボケ防止になるって言うし、ちょっと続けてみたいねぇ」
ポジティブな父にかかれば、キーボード練習ソフトは「指の体操」と言うことになるらしい。なるほどねぇ。
キーボード練習ソフトを使うようになってから、パソコンのトラブルが増えてきた。
このゲームを操作中に「全角半角」とか「カタカナひらがな」みたいなキーを押すと、そのあと何かキーを押しても無反応になる。
まあそんな程度のトラブルだ。
でもこういうトラブルって、「初心者にもよくわかる」みたいな本には解決策が書いてない。
ある日ワタシが家に帰って玄関をあけたら、パソコン一式を丁寧に全部詰めた箱が玄関先にあって、
パソコンが こわれました
よろしく おねがいします
父
と、弱々しい字で書いた手紙が添えてありました。
動かなくなっちゃったパソコンを前にした父の絶望的な気持ちとか、それを壊れモノを扱うようにそっとそっと箱に詰めるときの気持ちとか、手紙を書くときの弱々しい気持ちとかを思うと、ワタシはなんだか鼻の奥にツーンと来ちゃうような感じがして、コレは早く直さねばと思い「どれどれ」と箱からパソコンを出して電源を入れると、あっさり動いちゃったりなんかして、何がトラブルだったかさえサッパリわからないながらも、「パソコンを壊しちゃったかもしれない」と思って心細い気持ちでいるはずの父を安心させるべく、パソコンを持って実家へと走ったのでした。
さて。
父は最近、ようやくキーボード練習に飽きてきたらしい。
とりあえず父はキーボードとマウスに慣れてきた、と考えて良いのかな。
コレ、自動車教習所で言えば、仮免許取得くらい、かな?
ということで、つぎはいよいよ仮免で路上教習かな、ということで今日は光ファイバーの契約をしてきました。
5月からは父もインターネットをはじめることになるのだけれど、さてさてどんなことが起きますやら。
ワタシはちょっとハラハラしたりするんですけど、父はワクワクしているみたいなので、ますはめでたし。