ーOOO-ゲドを読む。

 先日から、「ゲドを読む。」という小冊子が配布されている。
 こんどスタジオジブリ作品「ゲド戦記」がDVDで発売されるのだが、従来同様に単にTVCM等で広告を打つのではなく、その予算を使ってフリーペーパーを配布してみよう、という試みだ。*1
 文庫本サイズの小冊子だが、200ページほどあってなかなか読み出がある。
 この本はアニメの宣伝として作られたのだけれど、どちらかというと原作のゲド戦記について深く踏み込んだ本になっている。中でも重要なのが、

の二つだ。
 中沢新一は、ゲド戦記の作者ル・グィンの生い立ちから始まり、ゲド戦記の世界観、各巻の作品の内容に触れながら、ゲド戦記がいかに画期的なファンタジー作品であるのかについて語っている。
 河合隼雄は、臨床心理学者の立場から、ユング分析心理学の自己実現をキーワードに、原作の一巻から三巻までを分析してみせる。
 そのほかいろいろな読み物が詰まっている。原作ファンなら、読書力のある読書家なのだから、映画の宣伝臭い部分は鼻をつまみながら、読むべき部分をキチンと読み取ることが出来るはずだ。*2
 公式ページの配布店一覧を見ながら、どこのお店で配っているのかと思いつつ街を歩くのは、ちょっとした冒険気分でなかなか面白い。
 無料配布はすでに始まっていて、一部の店舗ではすでに品切れになっていた。自分の向かうお店にホントにモノがあるのか無いのか、そこら辺のハラハラ感も面白い。
 原作をより深く味わう手助けとして、「ゲドを読む。」を読むと良い。

*1:「原作のすばらしさを訴える」という手段を使わなければ、悪評に満ちた映画のDVDを売ることは出来ない…、と考えたのかも知れない

*2:「映画はアレな出来だったけど、まあ仕方ないか…」と、うっかり思わされそうになる