ーOOO-芯キャベツの秘密

 いつも愉快な弊社の、その日の昼ご飯は焼きそばだった。
 一度に大量に作られた作り置きの焼きそばを取り分けるので、少し麺が伸びたような、なんだか冷めてしまったような、どこかもの悲しい味がした。
 上司が「この焼きそばのキャベツは、芯ばっかり選んで使ってるのかねぇ?」と言った。見れば確かに、芯の部分が多く使われているようだった。
「焼きそばって言うのは、キャベツの芯の部分を選んで使うモノなのかねぇ?」
「あー…。いや、そんなことはないと思いますけど…」
「芯の部分だと焦げにくいとかさぁ、芯の歯ごたえが大事だとか。あるいは芯を炒めると甘みが出るとかさぁ」
「そんな話をされると、そうかなあって気もしますけど…」
「屋台の焼きそばって、芯ばっかり使ってる気がするよなぁ」
「アレは確かにそうですね」
「芯ばっかりの芯キャベツみたいなモノがあるのかねぇ?」
 そんな話をしていたのだが、そこで弊社のSさんが
「屋台の縁日の焼きそばのキャベツが芯ばかりなのは、葉っぱの部分をお好み焼きに使っているから」
という説を唱えた。
「それだ!」
「それだよ!」
 ワレワレの疑問は氷解した。


 しかし考えてみれば、
「弊社の昼ご飯の焼きそばのキャベツが芯ばかりなのはナゼか?」
という最初の疑問に、ワレワレは有効な回答を示すことは出来ていなかった。*1
 科学万能の時代。
 だが、世界にはまだ未解決の、数多くの謎が残されている。

*1:食堂のオバチャンの機嫌が悪かったから説、というのがある