ーOOO-郷に入りては

 「郷に入りては郷に従え」ってコトバがある。格言かな?
 あ、Googleさん的には「もしかして『郷に入っては郷に従え』?」とか出てきますな。どっちが正しいんでしょうか。個人的な語感では「郷に入りては」なんですがー。
 で、「郷に入りては…」の「郷」って何だ? と辞書を引いてみたが、手元のデイリーコンサイス国語辞典では
ごう「郷」

  1. いなか
  2. その土地

と、ワリとアッサリした解説。コレを直接置換して「その土地に入ってはその土地に従え」と置くのはまあいいけど、
「イナカに入ってはイナカに従え」
と置くと、コレはちょっと刺激的ではないか。
 地方に転勤になった家の子が、その地方の学校に転校したら 「トーキョーっぽい風を吹かせやがってョ」 とかいじめられちゃう… そんな風景が目に浮かびはしないだろうか?
 もうちょっと郷について調べてみたのだが*1

  • 701年に制定された大宝律令によって日本は国・郡・里の三段階の行政組織に編成された
  • 日本の律令制では50戸を1里とした
  • 715年に里を郷に改称した

ということらしい。
 現代のイメージに直すと、「郷」は県よりも市よりも小さく、町内会より広いくらいの面積。そこに50戸が集まり、これを一つの「郷」と呼ぶ、と。
 んで、この狭くて人口の少ない各々の「郷」。
 そんな「郷」に入りては「郷」に従え、と。
 狭くて人口の少ない各々の「郷」には、各々のしきたりがある!
 逃げ場のない、狭くて息苦しい感じ。
 ニッポンのじめじめとした「ムラ社会」みたいなモノが濃厚に感じられる格言である、と言えよう。


 さて、「郷に入りては郷に従え」ってコトバは英語だと "When in Rome, do as the Romans do." と言うらしい。
 2つの格言は微妙に重ならない。だがその「ズレ」に面白みを感じた。
 "When in Rome, do as the Romans do."を訳すと、「ローマでは、ローマ人がするようにせよ」
 で、ローマってのは「全ての道はローマに通じる」と言われちゃうくらいの大都会。なんつーの、電車の上り線をどんどん乗り継いでいくと最後は東京駅に着く、みたいな感じか。
 "When in Rome, do as the Romans do." を格言にするヒトはもちろん、ローマ人ではない。つまりイナカモノなのですな。
 地方の高校生がお年玉を握りしめて、お正月に東京にやってくる。「地元じゃ自分が一番カッコいいぜ」とか思いながら渋谷の街に降り立ってみたら、
 浮く!
 チョー浮いてる!
 自分、カッコ悪すぎ!
 逃げ出すように地元に帰ってきて、
 「シブヤではシブヤっぽく振る舞わないとヤベェぜ…」
 みたいなことを言ったとか言わないとか。そんな風景が思い浮かぶではありませんか!


 そんなことを考えながら記事をぱたぱたと打ちつつ検索をかけていたら、英語でしゃべらナイトのページにこんな記述が。

これ、日本語と英語ではちょっと意味が違うと思います。
「郷に入りては 郷に従え」は非常に受動的でしょ?
ところが "do as the Romans do" は「ローマの人を真似してがんばれ!」これは能動的。

http://www.nhk.or.jp/night/arc-20050718.htm

 なるほどー。これも面白いなーと思いました。*2

*1:Wikipedia古代日本の地方官制

*2:ところで「〜がんばれ!」ってのはドコから訳出したんだろーか?