ーOOO-輝け!栄えある「本屋大賞」

 全国の書店員が「一番売りたい本」を選ぶ「2008年本屋大賞」が8日発表され、伊坂幸太郎さんの「ゴールデンスランバー」(新潮社)が受賞した。
 「本屋大賞」は、「全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本」をキャッチコピーとして掲げている。過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思った本を選び、投票により決定する。
 また、今回の本屋大賞の選考経緯などを網羅したムック「本屋大賞2008」が発売になっている。


 で、ワタシが今回オススメしたいのは、この「本屋大賞」そのものと、「本屋大賞2008」というムック、コレなのですね。


 本を売る立場、本の目利きの書店員さんたち。
 その書店員さんたちが「面白かった」「お客様にも薦めたい」と言うんだから、ノミネートされた作品がつまらないはずがない。面白いに決まっているのだ。
 でも、この本屋大賞は、「いちばん! 面白い本」を決める賞だ、とは言っていない。
 これはあくまでも「全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本」の賞なのだ。
 「あなたの好みに合うかどうかはわからないけれど、書店員として、一番オススメする作品はコレですよ」ということ。また、「日本一の文学作品は何か?を決める賞ではない」という主張が込められている。
 「いちばん売りたい本」の賞である、という収まりの悪い感じの言い回しは、ずいぶん考えられていると思う。


 このムックの巻頭には、大賞を受賞した伊坂幸太郎さんの言葉が載っているのだが、これが読ませる。「書店員さんに選ばれた大賞」という重みと、その喜びが伝わってくる。
 そこから、書店員さんの推薦の声が続く。
「面白かった!」
「お客様にオススメしたい!」
「もっと売れて欲しい!」
 そういう熱いメッセージが、怒濤のように連なっている。
 たとえば「〜の部分の掘り下げが弱い」とか、「トリックが弱いが」といったような『条件付きでオススメする』みたいな書き方をするヒトは1人もいない。また、あらすじを延々と書いて行数を稼いだりするヒトはいない。このムックの中の推薦文は、作品のネタバレする恐れはない。
 「批評家きどり」のコメントは載っていない。
 ただただ、真っ直ぐに「オススメしたい!」というキモチにあふれているのだ。
 熱い推薦文は2位以下の作品にも寄せられている。
 順位が低いからと言って、その作品に対する推薦文の「オススメしたい!」というキモチが弱まることはない。


 この本屋大賞2008では2007年に発表された作品の中から大賞を選ぶことになっている。
 だが同時に、「復刊お願い!この文庫」というリクエスト企画が載っている。現在絶版になって発売されていない作品の、復刊を望むリクエストだ。
 そして「書店員の発掘本」コーナー。これは、本屋大賞のノミネート作品以外全て、2006年以前に発売された全ての作品を対象に、書店員さんがオススメ本を発掘してくるコーナーだ。
 新刊本だけでなく、古い本にもスポットライトを当てているところが素晴らしい。また「オススメしたい!」と言うキモチはこのコーナーからもひしひしと伝わってくる。
 これらのコーナーから、自分の興味を引く本を探すのは面白い。なにしろ全部、誰かのオススメの本なのだから。
 しかしそれだけでなく、自分が昔読んだことのある本をオススメしている文を読んで、「わかる!わかるよその気持ち!あれ、面白かったよなー!」という再確認をするのも面白いです。


 この「本屋大賞」のムックに紹介されている作品は、とにかくすべて、誰かのオススメなのだ。
 大賞作品はもちろん素晴らしいけれど、そうでない作品もみな、素晴らしいのだ。
 寄せられた推薦文の数々を読んでいると、ついつい本が買いたくなる。
 そう、ワタシは面白い本が買いたくて仕方がないのだ。


 本の目利きが「面白かった」と思う本だけがノミネートされ、「その本がいかに面白い本であるか」というオススメの推薦文だけが並ぶ、本の魅力がたっぷり詰まった不思議なムック。
 そういうわけで、「本屋大賞」にはいつまでも輝いていて欲しいと思った。