ーOOO-誇りと謙虚さのハーモニー…ニッカ シングルモルト余市1988

 先日行われたニッカウヰスキーシングルモルト余市1988試飲会のレポートをお届けします。
 
 シングルモルト余市1988は、1988年に樽詰めされた原酒だけを使ったヴィンテージモルトです。
 昨年発売されたシングルモルト余市1987は、ワールドウイスキーアワード(WWA)2008でワールドベストシングルモルトウイスキー賞を受賞し、世界一のシングルモルトウイスキーに選ばれました。(→シングルモルト余市1987のレポートはこちら
 今回発売される余市1988の味にも大きな期待がかかります。


 ニッカウヰスキーのチーフブレンダー久光哲司さんがウイスキーを作るときは、やみくもに原酒を混ぜるのではなくて、まずはイメージになるフレーズやキーワードを思いうかべるのだそうです。
 今年のキーワードは、『わ』。
「人もウイスキーも調和が大事ということで、調和の「和」をキーワードにしましたが、その「わ」という言葉からどんどんとイメージが広がっていきました。
 今年は北京オリンピックが開かれたということで、五輪の「輪」。これには、世界のみんなが輪になって集まるというイメージや、「余市1987」が世界一になって金メダルを獲得したイメージなどを重ねています。
 それから、古代に日本という国をあらわしていた文字の「倭」という言葉が思い浮かびました。日本という国の長い歴史をイメージさせています。
 こじつけといえばこじつけなんですが、そういう単語からさまざまなイメージを膨らませて、今回のシングルモルト余市1988を作りました」
 
 さて、シングルモルト余市1988はどんな味なんでしょうか?
「まずはグラスのふたを取って、揺らしたりせずにそのまま静かに鼻を近づけて、トップノートを楽しんでみてください。蜜のような甘い香りがゆっくりと立ち上がってくると思います」
 
 参加者が全員フタをあけたとたん、会議室はふんわりとウイスキーの甘い香りに包まれました。
「それからこんどは、ゆっくりとグラスを回して、グラスのカベ全体がウイスキーで湿ったような状態にしてください。香りが力強く立ち上がってきたのが感じられるでしょうか?」
 
「では、いよいよ口に含んでみてください。最初の一口目はクチをちょっと湿らせる程度に含んで、すこし空気を吸い込んで口の中で混ぜ合わせるようにしてください。
 フルーツのような、洋ナシやあんずのような甘い香りが感じられます。その奥にピートのような香りもかすかに感じられます。
 樽熟成によるコクと、ピートのビターな味わいが調和しているのが感じられるでしょうか」
 


 会場の移動中に、久光さんとエレベーターでご一緒しました。
シングルモルト余市1988、とってもおいしかったですよ! ついついおかわりしちゃいました!」
と言ったら、久光さんはホッとしたような、どこか照れくさそうな顔をして
「自分の口から『美味しいでしょ?』とは言えないですけど」
と、ちょっと下をむいてモジモジしました。


 自分も和菓子屋で、味にかかわる商売をしているから、自分なりに久光さんの気持ちは良くわかりました。
 自分は裏方で、いつも工場にこもっているから直接お客様と触れ合う機会はない。
 美味しいものを一生懸命作っているつもりだけれど、その「美味しい」はあくまでも自分の舌が基準なので、すべての人が美味しいと言ってくださるとはかぎらない。
 間違っても『ほら、コレ、美味しいでしょ?』とは、自分の口からは尋ねられない。
 それだけに、お客様に面と向かって「美味しいですね!」って言われると、うれしすぎて、恥ずかしくて。


 美味しいものを作りつづける誇りと、それが本当に美味しく出来たかどうかを自問自答し続ける謙虚さと。
 誇りと謙虚さのハーモニーが、美味しいウイスキー作りの秘密なのではないかな、と思いました。
 


 ニッカウヰスキーシングルモルト余市1988は、2008年11月26日発売です。
 webでは先着限定600本が販売になります。以下のページよりお申し込みいただけます。