ーOOO-群雄割拠のネットブック市場 … Lenovo IdeaPad S10e

Lenovo IdeaPad S10e

 現在のPC業界で最もアツいのは、なんといってもネットブック市場でしょう。
 価格は5万円台を中心に、CPUはAtom、メモリは1-2Gバイト、重量は1kg少々…、そのほかそのほか。制約が多いカテゴリです。
 ネットブックを、多くの制約に縛られた低スペックのノートPCと言い切るのは簡単です。
 しかし、制限や制約が多いために、ネットブックは単なるスペック合戦ではなく、価格・性能・デザイン・使い勝手といった「本質」で勝負せざるを得なくなっています。
 自動車の世界では、軽自動車はエンジン性能や車体の大きさに制約がかけられていますが、そのことは安くて使い勝手のいい車を作るという方向へと競争を生みました。
 新機種が次々に発表されるネットブック市場はすでに「安かろう」では勝負できない市場となっています。


 
 そんな中、12月3日にThinkPadで有名なレノボ・ジャパンさんから、満を持してUMPC新製品が発表されました。
 今日は早速レノボさんの「ウルトラモバイルPC」Touch&Tryブロガーイベントに参加し、新製品のIdeaPad S10eに触ってきましたので、そのレポートをお届けします。
 

Lenovo IdeaPad S10e   主要スペック
CPU Atom N270(1.6GHz)
メモリ 1Gバイト(最大1.5Gバイト)
HDD 160Gバイト/5400rpm/2.5インチSATA
ディスプレイ 10.1型ワイド(1024×576ドット)
重さ 1.38キロ(←実測では1.29キロだった、とのレポートあり
バッテリー駆動時間 5.3時間(6セル)
サイズ 250(幅)×196(奥行き)×22〜36(厚さ)ミリ
OS Windows XP Home Edition(SP3)
そのほか 無線LANIEEE 802.11b/g)、Bluetooth、カメラ内蔵(130万画素)
価格 5万4800円

 
 すっきりとした外観。最初に発売されるのはホワイトだが、来年にはピンクとブルーが追加予定。

 
 わかりにくいけれど、一応大きさ比較用の写真。
 本体上のパンフレットは「EeePC 901-X」とほぼ同じ大きさ。
 本体下のパンフレットは「DELL Inspirpn mini 12」とほぼ同じ大きさ。

 
 キートップは平面。キーの左右と手前は斜めに切り落とされている。
 日本語キーボードでは特に右側の記号部分のキーが小さくなっていて、やや窮屈か。そのかわり、英数字キーには影響が及ばないように設計されている。

 
 本体側面。標準構成の6セルバッテリは、斜め下に丸く出っ張った形になっている。ちなみに別売の3セルスリムバッテリを使うと、この出っ張りがなくなって底面はフラットになる。
 側面には大きく排熱口が開いており、時おりファンが回る。

 
 本体裏面。ThinkPadにあった排水穴はIdeaPadには無し。
 手前側のスリットから空気を吸い込み、さきほどの放熱口に熱を逃がす構成。
「日常的にお使いいただくために、廃熱設計には気を使いました。特に、ひざの上に乗せて使っても熱くならないように、本体裏面の排熱には特に配慮しました」

 
 裏側のフタをはずすと、メモリスロットとHDDスロットにすぐにアクセスできる。交換は容易。
 ちなみにThinkPadにあった落下する瞬間にHDDをプロテクトする機能は無し。

 
 HDDは2.5インチSATA。将来的に「要望が多ければSSDモデルも用意するかも」とのコメントだったが、待ちきれない人は自分でSSDに換装することも容易だ。

これは、レノボの「コンシューマー市場参入宣言」でもある

 レノボはビジネス向けにPCを作ってきましたが、今回はじめてコンシューマー市場に参入することを決意したのだそうです。
 そして「ミニモバイルのセグメントで入れられるものをすべて入れよう」と考え、日本市場向けにスペックを絞ってIdeaPad S10eを発表しました。
 たとえば、「SSDを搭載してほしい」という要望は多いけれど、実際にSSDを積んだ機種を買うと「容量が小さい」という不満が多くなるようだ…といったユーザーの声をいろいろと聴き、このマシンのスペックを決定したのだそうです。
 また、当初は1スペックで発売されるけれど、将来的にはユーザーがオプションを選んでカスタマイズできるようなモデルというのも考えておられるようです。


 このIdeaPadは、機能は充実していて盛りだくさんなのですが、ちょっと本体の重さが気になります。
 「重量は1.38キロと重いけれど、この機種には6セルのバッテリーを積んで5.3時間稼動することが出来ます。他社さんは3セルバッテリーを積んでいるものが多いです。駆動時間と価格と重さのパフォーマンスを考えると、この製品には自信があります」
 IdeaPadは、ThinkPadほどではないけれど堅牢性が高く、他社のネットブックに比べると丈夫に作ってあるようです。この部分も、本体重量の重さにつながっているのではないでしょうか。
 ちなみにカタログ重量は1.38キロですが、評価機の実測では1.29キロだった、とのレポートもあるようです。


 コンシューマー市場に参入するにあたり、他にレノボが準備したのが「ユーザーサポートの充実」なのだそうです。
 年末年始を除き9時から21時まで無料電話受付、修理は製品無料引き取り後4-5営業日で返却するということで、これは他社とよく比べると大変充実しています。

個人的なまとめ

 冒頭で述べたように、ネットブック市場は非常に盛り上がっていますが、すでに「安かろう」では勝負できない市場となっています。
 そこに新規参入するという「冒険」をするにあたり、レノボさんは非常に手堅いマシンを発表しました。
 価格はネットブック市場の中心ゾーン。
 スペックは他社と同等か、やや上回る。
 ちょっと重いのが気になるけれど、それはバッテリー駆動時間と堅牢性の表れでもある。


 手堅い「冒険」IdeaPad S10eと、レノボが今日発表した「コンシューマー市場参入宣言」。
 この2つによって、ネットブック業界には少なからぬ衝撃が走ったようです。
 今日行われたプレス向けのIdeaPad S10e発表会には通常以上の記者が集まり、テレビの取材が入り、立ち見が出るほどの盛況だったということです。
 また、先日ワタシがレポートしたばかりのDELL Inspiron mini 12は、発表時は89800円からだったのに、つい昨日価格改定を行って59800円からとなり、さらに今日はOSをUbuntuにして価格が49800円のモデルを発表しました。
 ネットブックは価格・性能・デザイン・使い勝手といった「本質」で勝負せざるを得ない市場となっています。製造・開発するメーカーさんは悩ましいことでしょうが、われわれ消費者も選択の余地が増え、しばらくの間は悩ましい日々が続きそうです。
 
 蛇足なんですが、今回のIdeaPadが物足りないとか、チャチいと感じた人は、ThinkPadを選ばざるを得ないわけです。IdeaPadThinkPadでは価格に大きな差がありますが、細かな違いの重なりが大きな違いを生んでいるわけで、それがわかる人にはその価格差には意味がある、というわけです。