ーOOO-ふるさとの訛りなつかし

 いつもゆかいな弊社の上司は青森県出身だ。
 上京してから50年近くなるけれど、訛りは案外抜けないものだ。
 弊社には戦後の集団就職世代が多くて、それも青森から上京してきたヒトが多い。会社のみんなが訛っているから、ますます訛りが抜けなくなっている。
 ワタシは父方の実家が青森だから、けっこうあっちの訛りになれているので平気なのだが、他の若手の社員の中には「最初は良く聞き取れなくってさぁ」と言う人もいるくらい、ウチの会社のヒトはみんな訛っている。


 
 数年前、上司はひさしぶりに実家に挨拶に行こうと思い、家族を連れて青森に帰省した。
 飛行機を降りて、鈍行電車に乗り込むと、そこは懐かしいふるさとの言葉が飛び交っていた。
 地元の高校生たちがサッカーの話で盛り上がっている。当時はワールドカップの予選が行われていたのだ。
「ねえ、で、日本は勝ってるの? 負けてるの?」と、上司の奥さんが聞く。
 上司は高校生の会話に聞き耳を立てた。
 必死で会話を聞いていたのだが、何点入っているのかはおろか、結局日本が勝ってるのか負けてるのか、それさえわからなかったということだ。
「だってよォ、アイツらスゲェ訛ってるんだモンよォ、オドロいちゃったゼ」