ーOOO-名越さんの話
実はワタシもこのイベントを見てたので、なんとなく書いてみる。メモや録音をしたわけじゃないので、内容には記憶違いも含まれます。ま、参考程度に。
ちょっと追記(09/10/16)
何件かブクマをもらったので、うれしくなって写真とエピソード追加。
ファミ通さんの記事は論点をすっきりさせてあるけれど、そこからこぼれ落ちた部分も多いわけです。で、トークセッションの中で自分が面白いと思った部分をピックアップしてみました。
上京してきて映画の勉強をしてたんですけど、学生の頃はとにかくお金がなかったわけですよ。
で、あるとき彼女がファミリーコンピューターとスーパーマリオを買ってきてくれて。
アレは本当に衝撃的でしたね。
テレビがテレビでなくなる瞬間、といいますか。
チャンネルを変えて番組を見る物だったテレビが、ファミコンをつなげた瞬間、画面の中の物を自分で操れるようになった…というのを目の当たりにした、あの瞬間は衝撃的でしたね。
で、ヒマさえあればずっとマリオばっかりやってましたね。
セガに入社したときに、自分はコンピューターを全く使ったことがないってことに気がつくわけですよ。
キーボードのAからZまで押すのに、5分くらいかかっちゃう。
だから最初の仕事は、フロッピーディスクのフォーマットを延々とやってましたね。当時はLANなんかないですから、社内のデータのやりとりは全部フロッピーだったんですよ。で、新品の3.5インチのフロッピーディスクのパッケージをあけて、パソコンにセットして、「フォーマットしますか?」で「y」を押す、と。そんなことしかできなかったですね。
自分はデザイナーで入社したんだけど、周りの人たちの描く絵を見ると超スゲェわけですよ。色数なんかも今と違って全然少ないですし、でもなんでこんなイキイキとしたキャラクターが書けるのか不思議で。書く道具もデジタイザーだから、全く勝手が違って。
で、全くわからないから、作業をずっと後ろから見てて、何をどうするのか見てましたね。
朝一番に出社して、一番最後に帰る。一日18時間くらい会社にいて。家に帰れば寝るだけで。貯金だけはちょっとづつ貯まっていくんだけど、使い道が無くて。彼女に愛想を尽かされて別れちゃったんですけど。
で、入社して7ヶ月目くらいに初めてキャラクターを描いて。自分の書いた物が、画面の中で動いたわけですよ。まだゲームにもなってない段階で、とりあえずモニターで動かしただけだったんですけど、もう動いた瞬間、感動して。思わず泣いてしまいましたね。
世の中に全く存在しなかったものって、他人がまったく理解できないんですよ。だから最初は否定されるものなんですよね。
あの『甲虫王者ムシキング』だって、3回もプレゼンに落ちたんですけど。だって「ジャンケンしてカブトムシがバックドロップするゲーム」ですよ? もう最後はプロデューサーが号泣して「こういうのがいいんです!」って。熱意ですよね。
僕が昔作った『デイトナUSA』のときは、「車がドリフトするゲーム」っていうコンセプトだったんですけど。そしたらプレゼンの段階で「まっすぐ走れないゲームなんて、それは無理だ」って。ドリフトの面白さを理解してもらえないわけですよ。いや、それが面白いんだ、って事を説得して回って。
ちょうど同じ頃にナムコさんから『リッジレーサー』ってゲームが出て。これを作った人も、やっぱりナムコ社内の「まっすぐ走れないゲームなんて!」みたいな意見を説得するのが大変だったらしいですね。
企画が通るか通らないかっていうのは、プレゼン力みたいな部分はありますね。
見たことも聞いたこともない全く新しいコンセプトを、「遊んだときにどうなるか?」という面白さを感じさせるように伝える力、というのが大事です。
プレゼンでよくあるダメなのが、「Aっていうゲームのあの部分と、Bっていうゲームのあの部分の面白さをミックスしたようなゲームで…」っというヤツですね。
確かにスゴくイメージしやすいんですけど。でもそれって、どれだけ言葉を尽くして語っても二番煎じじゃん、って話でしょ?
で、逆にポンと通る企画もあるんですけど。
スーパーモンキーボールのiPhone版っていう企画があがってきたときは、ザッと目を通して5秒で即決ですよ。
開発期間や予算と、予想される販売本数の数字がキチンとしてて問題点が全くなかったですから。コレは即決でしたね。
アフターバーナーっていう飛行機のゲームがあって、画面がグルグル回転して機械が前後左右に揺れるゲームだったんですけど。
で、僕はこのゲームは回転するから面白いんだなーと思ってたんですけど、当時開発した鈴木祐さんにきいたら「ミサイルから煙がドバドバ出るところにこだわった」っていうんですよね。
ミサイルを発射すると、煙がドバドバ出てスーッと飛んでいく。それが気持ちいいんだ、と。
あるときドライブゲームを作るときに、スピードメーターをデジタルな数字にしたんですよ。
そしたら「これはどうしてデジタルなの?」って訊かれたんです。
僕はデジタルな方が今の時速がはっきりわかるので良いと思ったんですけど、最終的にはデジタルな速度表示とアナログなメーターと両方つけました。
アクセルを踏んだときに、グッとためてから、ビョーンと針が跳ね上がる。アナログメーターだとタメがあって、そういう演出ができるんですね。
ドライブゲームでポリゴンが増えると、道路の白線が増やせるからいいなぁと思うんですね。白線がいっぱい出ると、スピード感の表現ができるんです。
テクスチャーマッピングができるとアスファルトの表現ができて、これもスピード感の表現につながる、と。
で、いまはとにかく画面がリアルなのが売りのドライブゲームとかあるじゃないですか。
でも、リアルなだけで面白さにつながるのか? っていうと、それは違うと言いたい。
技術は向上し続けているから、表現力はどんどん向上していくだろうし。で、リアルさの表現が行き着くところまで行き着いちゃえばいいのに、とは思ってるんですけど。
昔、ゲームに関する大規模なアンケートを取ったことがあったんですよ。
超有名なゲーム8本くらいの名前を出して、「知ってますか?」とか、「やったことがありますか?」とか、もっともっと細かい質問が数十個もあるようなアンケートなんですけど。
で、その中で僕が本当に知りたかったことって一つしかなくって、それは
「そのゲームを、あなたはクリアしましたか?」
ってことなんですけど。
で、その答えが、
「20%」
だったんですよ。
せっかくお金を出して買ったゲームなのに、20%の人しかクリアできてない!
コレはゲームを作る者として、本当にショックでしたねぇ。
もう「大人になったからゲームを卒業する」みたいな時代じゃなくなってるだろう、とは思うんですけど、『龍が如く』でアンケートを取ったら、40歳以上のユーザーが40%もいるんですよ。
50歳以上が15%。60歳以上も4%…いや、もうちょっと少ないかもしんないですけど、それくらい平均年齢が高いんですよ。
で、アンケート葉書をくれた人の中で最高齢が65歳。クレームが書いてあって、「エンディングがうんぬん」ということと、「説明書の文字が小さい」(笑)。
形はどうあれ、というかクレームの葉書をわざわざ書きたくなる程度に、この65歳の人の心を揺り動かすようなゲームを作ったんだ、と思うとスゴいうれしかったですよね。
↑ ※Wiiとは全く違うアプローチだけれど、子供から大人まで遊べるゲームを作ったんだなぁ、と。
昔ちょっと太ったことがあって、こりゃヤベェと思ってスポーツクラブに行って筋トレして、2ヶ月で16キロ痩せたことがあって。で、運動不足解消のために、恥ずかしながらコナミスポーツクラブに通ってるわけですけど(笑)。
コナミの小島さんもスゲー鍛えてるんで、どこ行ってるんですかって訊いたら『トータルワークアウトです』って(笑)。ちょ、あなたはコナミに通いなさいよ、と。