ーOOO-白夜街

 夜おそくに家路を急いでいたら、空がけっこう明るいことに気がついた。
 ネオンがケバケバしい都心の話、というわけではない。
 街灯が少ない寂しい夜道だって、けっこう明るく見えるものだ。
 曇りの日には雲がほの白く輝き、路面は夜空に照らされて黒々と光る。
 自分が子供だったころの夜空は、もっと怖くて真っ黒だった。
 一日の中の昼と夜の境目は今や、うすぼんやりとしている。
 一体いつまで夕方なんだろうか?
 ふと来た道を振り返って見れば、都会の夜空は紅く燃えさかっている。
 あの下には眠らない人達がいて、今もまだ遊んだり働いたりしているのだ。
 思えば私も子供から大人になり、夜の闇に恐れを抱かなくなった。
 ただそれだけの話かもしれない。
 衛星で夜の地球の写真を撮れば、光に縁取られた日本が浮かび上がるという。
 我々は人工的な白夜の中にいる。
 その下には眠れない人達がいて、今もこうして遊んだり働いたりしているのだ。