ーOOO-大義理

 いつも愉快な弊社の後輩君との会話。
「今日はバレンタインじゃないスか! センパイ、会社のおばちゃん達から、チョコもらいました?」
「いやー、もらえなかったなぁ」
「オレもっスよ…」
「去年ももらってないんじゃなかったっけ?」
「おととしはもらったような…」
「じゃあアレだな、リーマンショックをきっかけとした世界的大不況の波が、おばちゃんたちの財布のヒモを堅く…」
「いや、おととしチョコもらったときに、お返しをしなかったのがマズかったんじゃないッスか?」
「え、オレ、お返ししたよ?」
「マジっスか? オレ、お返ししてないっスよ?」
「あちゃー!」
「え、俺っスか? 俺のせいっスか?」
「オマエのせいで、オレまでチョコもらえないじゃんかよ!」
「いやー、失敗しましたね…」
「じゃあアレだ、最近は逆チョコとかいうのが流行ってるらしいから、こっちからチョコをおばちゃんたちにプレゼントしたらどうだ?」
「パートのおばちゃん、何十人もいるじゃないッスか!」
「全員じゃなくて、いつもお世話になってるおばちゃんを選んでチョコをあげればイイんじゃねーの?」
「『いつもありがとう』 って?」
「たくさんいるおばちゃんの中から選びに選んだ大事なおばちゃんに心を込めて 『これはボクの心からの気持ちのこもった真剣な義理チョコです!』 って」
「本気な義理チョコっスね!」
「でもなんかそーいうことすると、おばちゃんたちがあとで 『えこひいきだ』 とか、『あの人はあの人に気があるのよ…』 とか、陰であることないこと言われそうな感じ、するよなぁ…」
「人目を忍んで陰でこっそりと、チョコ渡したらイイじゃないッスか!」
「隠れて渡したら、ますます怪しいじゃんか! なんか義理チョコっぽくないんだけど…」
「じゃあやっぱり男らしく、みんなの前で正々堂々と胸を張って告白したらいいじゃないッスか!『これ、ボクの本当の気持ちですッ!』 って」
「ってかオレたち、ちょっと義理チョコが欲しいな…って話してたはずなのに、なんでこんな話になっちゃってるわけ?」
「そうですよ、義理チョコをもらうために、何でこっちがチョコをプレゼントしなくちゃならないんですか? チョコが食べたかったら、自分で買いたいもんを買って食べたらイイじゃないスか!」
「あ、それが理由じゃねーの? 義理チョコがもらえない理由」
「あー…」