ーOOO-ホームで電車を待ちながら
先日ちょこっと出かけた帰り道のこと。
この日は冬のど真ん中。キーンと空気は冷たく澄んでいて、遠くのモノがとても良く見えた。
電車を待ちながらホームの端まで歩いたら、線路の向こうの夕焼け空が大きく見渡せた。
夕暮れの空の赤さも混じりっけなしでトーンと澄んでいる。
思わず写真をパチリ。
そのとき、電車の写真を撮っていたこども店長みたいな少年が、私に声をかけてきた。
「写真を撮るなら、このあと5分後ぐらいにナントカ系の新型車両が来るから、それまで待つといいですよ」
いや、あの、電車じゃなくて、ちょっと夕焼けを撮ろうとしただけだから。
私がそう言うと、少年は
「そうなんですか…」
少し残念そうな顔をした。
見れば、彼は三脚を立てて一眼レフカメラをセットし、胸にもデジカメを装備して、写真を撮る気まんまんだ。よっぽどすごい電車が通るのだろうか。
ねえ、このあと通る新型電車って、どんな電車なの? そう尋ねたら、
「このあと来る新型車両は、ナントカでナントカな車両で、この路線ではまだ一編成しか導入されていないんですよ。だから、とっても珍しいんです!」
なるほど、とは思ったが、私はそれ以上質問できる項目もなく、彼は彼で一眼レフカメラのピント合わせとテスト撮影に没入しはじめたから、お互い黙っていた。
私の横に、高校生くらいの男の子がやってきた。彼もまた、デジカメを準備しはじめた。やはり、新型車両が気になるのだろう。
この後、どんな新型車両がやってくるのだろうか?
その瞬間を、待った。
「まもなく、電車が到着します」
ホームにアナウンスが流れる。
遠くの方から、電車が近づいてくる。
この瞬間を待っていたこども店長が、シャッターを切る!
シャキューンシャキューンシャキューン!
負けじと高校生もシャッターを切る!
つられてなぜかワタシもシャッターを押す…ッ!
やってきた新型車両は、あまりにもフツーの各駅停車の電車だったので、拍子抜けした。
見た目は小ぎれいで、新車っぽくパリッとしている。
でもやっぱり、フツーの各駅停車の電車なのだった。
発車のベルが鳴る。
家に帰るべく、ワタシはその電車に乗り込んだ。
コレは新車なのだ…と思いながら乗ってみると、なるほど確かにその車内にはどこか新車のような香りが漂い、心なしか加速もスムーズで、いくぶん乗り心地が良いと感じられたのだった。