ーOOO-「複合機の地動説!」って、いったい何なの?…Ricoh「App2Me」
みなさん、オフィスの「複合機」って知ってますか?
会社でバリバリ複合機を使いこなしてる人には当たり前なんでしょうが、恥ずかしながらワタシとしてはこの単語が耳慣れないわけなのでー。
そもそも、まず中心にはコピー機がある、と。
で、コピー機をPCにつなぐと、プリンターとしても使えるし、スキャナーとしても使える、と。
電話回線につなげばFAXにもなる。受信したFAXをPCで受け取ることも出来る。その逆に、PCからFAXを送ることだって出来る。
オフィス中のPCとつながっているから、ファイルサーバーとしても使われる。
この多機能ぶりって、ナニ?
もはや、なんと呼んだらいいかわからない。
と、これは「複合機」と呼ぶしかないシロモノになるのですな。うーむ。
さてさて、つい先日ワタクシはリコーさんにお邪魔して「App2Me」というサービスのお話を聞いてきたですよ。
この「App2Me」は、PCと複合機を連携して使うためのサービスなのです。
複合化の道は、多機能化なのか複雑化なのか?
リコーさんはそもそも、理化学研究所で開発された「理研陽画感光紙」の製造及び販売の目的で作られた会社です。
感光紙を使ってコピー機を販売したリコーですが、ユーザーのためにさらに良い製品を、さらに高機能に…としているうちに、コピー機はどんどん多機能化し、今あるような「複合機」が出来上がったのです。
現在では複合機の高機能化はさらに進み、「複数の原稿をまとめて1枚の原稿に印刷」が可能だったり、「複数の原稿をまとめて中閉じページの製本が可能」だったりするのだそうです。…ってか、コピー機で製本って、スゴくね?
しかし、オフィスではそれらの「便利機能」は使われていません。それどころか「そんな機能があることさえ知らなかった」と言われる事がほとんどだそうです。
リコーの営業さんはユーザー企業の担当者さんにキチンと説明をして、「その機能は我が社でも便利だ」と納得をしたうえで新機種を導入します。
ですが、実際に複合機を使っている現場の担当者にはその新機能が説明されず、せっかくの便利機能が宝の持ち腐れになっているのです。
また、「その機能は便利そうだけど,複雑そうでよくわからない」と言われることもあるそうです。
高機能化しても、実際に手にするユーザーにわかってもらえなければ使われないわけで、とてももったいない話ですよね。
そこで登場したのが、「App2Me」というサービスなのです。
わたし次第で思いのままに…App2Me
さて、App2Meはどんな使い心地なのでしょうか? 実際に試してみましょう。
ウィジェットとは、ちいさなプログラムです。画面にズラッと並んでるアイコンみたいなのがソレです。
ズラッと並んでるので一瞬ひるみますが、これはあくまでも説明用。
自分で使うときは、よく使う機能のウィジェットだけをデスクトップに置いておけば大丈夫です。
さて、ここでは画像から書類を作成するウィジェットを使ってみます。
いつもの自分のPCで、書類に使いたい画像を選んでおきます。
使いたい画像を、書類作成用のウィジェットにドラッグ&ドロップ。
ここでは3つの画像をドロップしましたが、もっと入れても大丈夫。
画像の位置関係を自分好みに調節します。
で、プリント。
はいできた!
このウィジェットでは凝った画像処理は出来ませんが、「とにかく今すぐに書類を作成したい!」 そんなときにサッと立ち上げて、パッと印刷できちゃう機動力があります。
で、今後おなじことをしたいときは、このウィジェットの使い方にさえ慣れておけば、複合機が別な新しい機種になったとしても簡単に同じ事ができるわけです。
今回はApp2Meに6つのウィジェットが公開され、App2Me対応の複合機ユーザーであれば、無料でこれらのウィジェットを使うことが可能になっています
「このウィジェットじゃぁ物足りないな…」と言う場合は、別なウィジェットを開発することも可能です。
あるいは、今後ウィジェットが増えてきた時に、その中から自分好みのウィジェットを選べば良いのです。
さらに、App2Meの基本思想は別なところにもあります。
WebサービスやWebAPIと関連づけて、複合機をさらに機能強化することが可能になるのです。
プログラムの開発はオープンなので、ユーザーがApp2Meのウィジェットを作ることも可能ですし、さらにソレを公開することも可能です。
たくさんのウィジェットが集まることで、複合機はより使いやすくなるでしょうし、また今までと違った新しい使い道が生まれるかもしれません。
実際に開発者を集めて、App2Meのウィジェットを作ってもらったところ、複合機にプログラムを作ったことが無くても、PCのプログラミングスキルがあればApp2Meのウィジェットを作ることが可能なのだとか。
ユーザーに使いやすい複合機を目指したら、プログラマーにとっても使いやすい複合機になった、というのが面白いですね。
このイベントでは、「名刺をスキャンすると、住所を読み取ってGoogleマップの地図データを貼り付けた状態でプリントする」など、さまざまなウィジェットが作られたそうです。
Yahooウィジェット、GoogleAppsとの連携が可能なのだそうですが、さて、あなたならどんな使い方を考えますか?
たとえば、楽譜をスキャンすると音楽データになって、さらに再生できちゃう…なんてどうだろう? いや、思いついただけなんですけど。
プリンタ、スキャナ、FAX、コピー、それらが絡み合って複合機なわけですが、いつか全く新しい複合機の使い道が生まれそうです。
「使いやすさ」というおもてなし
わたしは何にも知らなかったから、ついつい「コピー機」と呼んでいましたが、いやはや今どきのコピー機…もとい、「複合機」はスゴいんですね。感心しました。
いろいろな機能を複合することで「使いやすさ」を目指しているわけですが、リコーさんの「複合っぷり」はソレだけじゃないんですよ。
給紙トレイ部分の引き出しが「輪」の取っ手になっていて、上下自由につかむことができて便利です。
これ、他社製品は下からしか手を入れられないんですよ。知ってました?
会社やコンビニで複合機を見かけたら。ちょっと確認してみてくださいね。
あとは、この操作パネル。
この部分の色分けやLEDの発色は、色覚障害者の人でも安心なように設計されています。
どんな人にも使いやすい製品を目指しているんですね。
それから、リコーは環境にも配慮しています。
中古の複合機を破棄するのではなく、完全に整備してから再生機として市場に投入しています。
また、石油を使わず生物由来の樹脂をつかった「バイオマストナー」も採用しました。
ということで、リコーさんは複合機にいろいろなものを詰め込んでいくことが「使いやすさ」に繋がると信じ、あらゆる機能を「複合」してきたのです。
リコーのみなさんからすると、ビジネスの中心にあるのは「複合機」で、複合機の使いやすさをあげるために心血を注いできたわけです。
「そうではなくて、ビジネスの中心にあるのはPCで、複合機はその周辺機器なのである」
という主張は、リコーの社内的には
「複合機がオフィスの中心にあるという『天動説』」が、
「複合機がPCの周辺機器として使われる『地動説』」へ、
というコペルニクス的な大きな発想の転換が必要だったのだそうです。
この大きな発想の転換によって、複合機は「Webという宇宙」のAPIの力を手にいれました。
複合機はApp2MeとWebの力を複合し、これまで無かったような新しい使い方を、しかもユーザーに使いやすい形で提供することになるでしょう。