ーOOO-日本の都会に電動タクシーを!

 
 燃費の良くて地球に優しいハイブリッドカープリウスを使ったタクシーは、もうあちこちで走っていますよね。
 ところで、ガソリンを使わずに走る電動タクシー…世界初の電池交換式フルEVタクシーが、日本の街を走り始めたって、知ってましたか? それも東京のど真ん中、丸の内や六本木界隈を走り回ってるんですよ。
 電池交換式って、どうやって交換するの?
 そしてその乗り心地はどうなの?
 なぜタクシーをEVに、それもバッテリー交換式のEVにしたの?
 ということで今回私は、ベタープレイス・ジャパンさんのEVタクシーに試乗してきました。


 
 まずはタクシーの紹介から。
 このタクシーは、普通のセダン型のタクシーと異なり、SUV型の日産デュアリスをベースとして作られています。

 エンジンルームにはエンジンがなく、モーターがあり、電気配線が這い回っています。
 なるほど、電気自動車だなぁ…と強く感じるのはこの部分くらい。



 運転席周りは拍子抜けするほど普通です。
 目に付くのはハンドルの横にセットされたiPhoneではないでしょうか。
 このiPhoneは本部と結ばれ、タクシーの電池残量や速度、燃費などが表示されているのだそうです。



 通常のタクシーより背が高いので乗りこみやすいです。
 トランクスペースも広々していて使い心地が良さそうです。電池を積んでいても内部スペースは犠牲になっていません。


 走り出す時はキーをひねります。ごくごくフツーです。
 …が、エンジン音がしません。
 タクシーは音もなくスーッと走り出しました。とにかく無音です。
 200キロものバッテリーを積んでいるので普通の車よりも重いのですが、そのことがどっしりとした乗り心地を産んでいます。
 運転手さんに「運転して、普通のタクシーと何が違いますか?」と尋ねたところ、
「とにかく馬力が違いますね。普通のタクシーはLPGガスで走っているんですが、これは馬力が出ないので、走り出す瞬間にもたもたするんです。だけどコレは踏めば踏んだだけ前に出ますので、運転しやすいですね」

 そんな話をしているウチに、タクシーは試乗コースを一周し、EVステーションに戻ってきました。


 車を指定位置まで進め、エンジンストップ。

 すると床が開いて、

 バッテリーが外されます。

 そして載せ替えです。
 充電ずみのバッテリーを取り付けます。

 あとにはカラになったバッテリーが残りました。
 全てがすむと、運転手さんの手元に「バッテリー交換終了」のランプがともり、速やかに発車可能となります。

 このバッテリー交換はわずか1分で終了しました。
 外されたバッテリーは奥のラックにセットされ、充電作業に入ります。
 これらの作業は全自動で行われています。


 ところで、なんでEVタクシーが企画されたんでしょうか?
 そもそもベタープレイスさんは、アメリカの企業。バッテリー交換式の電動自動車を世界に普及させようとしています。
 その中で、「EVタクシーを作ろう!」と考えたのは、日本のチームだったそうです。
 これには日本独自の様々な事情がからみます。
 
 東京のタクシーは、乗用車の2%。しかしその走行距離の長さから、排出するCO2は全体の20%もあるのだとか。タクシーをEV化すれば、排出するCO2の量はグッと削減されるのです。
 タクシーの車種は、トヨタクラウンと日産セドリックの2車種で90%。車種の種類が少ないことは、バッテリーの共通化を容易にします。


 EV化には、バッテリー交換式の他に、コンセントによる急速充電式があります。
 しかし、タクシーの場合、充電時間が長いと売り上げに影響します。この点、バッテリー交換ならほんの1分で済むのです。
 それから、バッテリーを充電する時は、熱を持っていると充電効率が悪くなるのだとか。走行直後などでバッテリーが熱を持っている場合、いったん冷却しないと満充電になりにくく、バッテリーの寿命も短くなってしまうのです。その点、バッテリー交換式なら、いったん外したバッテリーを理想的な温度に保ちながら充電することが可能です。
 昨今はガソリンスタンドが次々に廃業しています。また、タクシー用のLPGガススタンドの多くは老朽化が進み、改装するか廃業するかの二択を迫られています。この中の一部がEVステーションに業態を変えてくれれば、EVタクシーの航続距離や営業範囲も広がります。


 タクシーはお客様を乗せて走るので、そのこと自体が一般市民へのEVカーへの理解や認知を広めます。ハイブリッドカーのタクシーはそれほど珍しがられないけれど、「EVタクシーは排気ガスを出さない」ということで、お客様に評判がよいそうです。EVタクシーの運転手さんはお客様にいろいろなことを質問されて、話が弾むのだとか。

 そのほか、EVタクシーに関するもろもろは、ベタープレイス・ジャパンさんのHPにまとまっています。
   
 ところで、飛行機に乗って海外からやってきたお客さんは、まず日本のタクシーのサービスに驚くのだそうです。タクシーって、日本の顔なんですね。
 日本のタクシーはチップもいらないのに世界一のサービスを誇ります。車自体だってピカピカです。
 そんな日本のタクシーが、すべて電気自動車になったらどうでしょう。
 それって、「環境先進国」「ハイテク」な日本の顔にふさわしいと思いませんか?
 このEVタクシープロジェクトは、現在実証実験の段階です。この実験、7月いっぱいで終わってしまう予定なのだそうですが、それだけじゃもったいないですよね?
 興味を持った方はぜひEVステーションに足を運んでみてください。週末は実際に施設を見学することが可能だということです。


 さてさて余談、というか感想というか。
 乗ってみてちょっと思ったんですが、この実験で使われたデュアリス、ホントにタクシーで使ったらいいのになーって思ったんです。
 背が高くて天井も高く、乗りこみやすい。それから荷室が広く、大きな荷物も載せられる。これって、タクシー向きなんじゃないかなぁ。
 最近のエグゼクティブはエルグランドとかエスティマみたいな大きなワゴンに乗るみたいです。タクシーやハイヤーも、クラウンみたいなセダン型にこだわる理由は無いですよね。


 それから、せっかく電気自動車なんだから、「コンセント使い放題」とかどうかなぁ。EVタクシーの航続距離に響くかもしれないけれど、ビジネスマンでタクシーに乗りながらノートPCを使う人って、多いんじゃないかなぁ?
 ついでに無線LANも完備したりして。そこまで行くと、「エコだからEVタクシーに乗る!」だけじゃなくて、「便利だからEVタクシーに乗る!」って、選ばれる用になると思うんですけど、どうでしょーかダメでしょーか?